脳の健康状態や物理的な質量は、年齢とともに自然に低下していくことが分かっていますが、話したいときに話を聞いてくれる人がいると、脳の健康につながるとの研究があります。
サマリーをシェアします。
2021年、アメリカ ニューヨーク大学グロスマン医学部のジョエル・サリナス医学博士を筆頭著者とする、社会的関わりの有無と脳容積と認知機能との関連を調べた研究が発表されました。
研究には、45歳以上で認知症や脳卒中の疾患の無い、2,171人が参加しました。
彼らは、脳の容積を測定するMRIスキャンと心理学的な認知テストを受けました。
また、愛情やアドバイスを与え支えてくれる人間関係の有無や、話し相手の有無についても回答してもらいました。
彼らを追跡調査し、65歳以上になった時点で再び統計を取り、データを分析しました。
結果、次のような事が分かりました。
1、話し相手がいる人は、脳体積の萎縮が少なく、脳の認知の回復力を保っていました。
2、このことは脳の老化や病気の影響を遅らせる可能性があります。
3、脳は加齢とともに自然に減少し、アルツハイマー型認知症などの神経疾患が進行していくものです。
4、しかし、孤独になるのを止めてくれる人がいる場合は、加齢に伴う認知機能の低下が少なくなりました。
5、話を聞いてくれる相手がいることで、加齢による脳の自然な縮小を防ぐことができると言えます。
6、通常、認知症とは無縁とされる40代、50代の人でも、話し相手がいる人は脳が4歳も若くなりました。
7、一般的に、脳の健康を守る方法を考えるのは、ずっと年を取ってからのことです。
8、しかしその何十年も前から脳の健康を保つ習慣を身につけ、それを維持するために時間を使うべきと言えます。
出典:JAMA Network Open
https://www.spring.org.uk/2021/09/health-brain.php
なんと他人と関わり、人と会話をする時間が多いと脳の健康を保てるそう。
この研究で興味深かったのは、認知症が発症するずっと以前の40代や50代のうちから、気づかないうちに脳の老化は始まっているということ。
日本人が何歳まで生きられるかを統計から予測した「平均寿命」がよく話題になりますが、最近では「健康寿命」も知られるようになってきました。
健康寿命とは、心身ともに自立し日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱して以来、いかに健康寿命を延ばすかに関心が高まっています。
2016年にWHOが発表した調査結果によると、日本人の平均寿命は84.2歳で健康寿命は74.8年となっていて、その差は9.4年でした。
この差の年数は、寝たきりや認知症などになってから生きられることを表しますが、この差の年数が少ないほど、生涯をより健康に過ごせるということになります。
話し相手がいる人といない人とでは脳の若さが4歳違ってくるとのことですが、これだと健康寿命に随分差が出そう。
よって、この4年間は非常に貴重です。
子育てで毎日に集中していると、老後なんて遠い先のことに思えますが、研究者によれば若いうちからの習慣が大事とのこと。
子どもだけでなく、大人にも聞き上手な相手が必要とのことですから、大人達もお互いに聞き上手になれるよう努力すべきですね。
仕事と家事と育児をこなす日々は慌ただしいものですが、そんな中でも大切な人との繋がりを大切にしていきたいものです。
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