心理学の用語で「馴化(じゅんか)」(habituation)という概念があります。
最初は未経験で不安だった刺激でも、繰り返すことにより次第に脳が慣れてゆくことを指します。
例えば子どもが本番に弱いタイプの場合、沢山練習して場数を踏ませると、本番の雰囲気にのまれず実力を発揮できるようになりますね。
時計の音、電車の揺れなどのように、初めは気になっていても次第に「馴化」が起きて、意識しなくなるのは良い事なのですが、その裏にはデメリットも隠れています。
人は慣れると、飽きてしまうのです。
仕事であれ、恋愛であれ、遊びであれ、お料理であれ、同じことを繰り返し体験すると「馴化」が起こり喜びが減ってしまいます。
では、どうやって「馴化」をリセットすればよいのでしょうか?
研究のサマリーをシェアします。
2018年、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのエド・オブライエン博士を筆頭著者とする、「馴化」を克服して初体験の感覚を取り戻す方法を調べた研究結果が発表されました。
研究の一つには、大学生68名(男性26名、女性42名、平均年齢19.63歳)が参加し、無作為に2つのグループに振り分けられました。
1つ目のグループは、ポップコーン10粒を1度の手づかみで食べるよう指示されました。
2つ目のグループは、ポップコーン10粒をお箸で1粒ずつ食べるよう指示されました。
同じ指示を2回ずつ行って、参加者がポップコーンを食べ終えるごとに、感情や感覚の評価を9段階で回答してもらいました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、ポップコーンを食べる際、手で食べるよりお箸で食べた方が、より楽しく集中でき、味も良くなりました。
2、これは、お箸がポップコーンを食べる道具として優れているからではなく、珍しい初体験によって脳の刺激が増えたことを示しています。
3、「同じ食べ物でも、いつもと違う食べ方をすることで楽しさが増す」という効果が示されました。
4、ただし、2回目に同じことを繰り返した際、お箸を使うことで楽しさを感じる効果は消えていて、両グループの差は小さくなりました。
5、脳に新しさを感じさせるのは案外簡単かもしれませんが、同時に、その効果は長続きしにくいと言えます。
出典:Personality and Social Psychology Bulletin
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167218779823
アメリカ人達がポップコーンを1粒ずつ、お箸でつまんで食べている姿を想像すると、ユーモラスですね。
研究によれば、「馴化」をリセットするためには、何か新しい変化を取り入れるのが良いとの結果になりました。
身近な活動でも、このような方法でマンネリをリセットすることができそうです。
そのための新しい変化は些細なことで構わないのですが、脳に飽きられない為には常に変化し続ける必要があります。
たとえば家庭料理の盛り付けを変えたり、お散歩のルートを変えたり、お部屋の模様替えをしたり、新鮮さを感じ続ける方法って、身の回りでいくらでも見つかりそうです。
特に子どもは飽きっぽいので、何かを継続させる為には、目先を変えるちょっとしたアイデアを考え続ける必要があるということになりますね。
そして、日々成長し続ける子どもに対して、親自身がさっぱり代わり映えせずに、やがて飽きられてしまうなんて目も当てられません。
日常にささやかな変化を取り入れて脳に刺激を与え、喜びや楽しみを増やしたいものです。
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