人前で過度に緊張してしまう、「社会不安障害」という疾病があります。
人前で何かをする時に、緊張感が高まって不安や恐怖を感じ、次第にそんな場面を避けるようになってしまいます。
緊張は誰にでもあることですが、たいていは経験を積むにつれて自然に振る舞えるようになるもの。
なので、本人が真剣に悩んでいても、周囲は単なるあがり症と捉えて深刻に受け止めないかもしれません。
ですが社会不安障害の場合は、自分でも何か変だと思っているにもかかわらず、緊張がどんどんエスカレートし、日常生活に支障をきたしてしまうのです。
発症年齢が10代半ばから20代前半と早いのが特長で、およそ75%程度が8歳〜15歳頃に発症するとも言われています。
その年頃で症状が強くなると不登校になってしまう可能性がありますよね。
ところが本人や周囲にも病気という認識がないと、単なるワガママや甘えと思われてしまうことに…。
「これは生まれ持った性格なのだからどうしようもない」と、長い間悩んでしまうケースが少なくないそうです。
しかし社会不安障害は、放っておくとうつ病の引き金になる恐れがあり、早めに発見して治療をする意義が大きいと考えられています。
その治療方法に関する、研究のサマリーをシェアします。
2016年、ノルウェー科学技術大学のハンス・モルテン・ノルダール教授を筆頭著者とする、社会不安障害の治療法と効果を比較した研究結果が発表されました。
研究では102名の患者を以下の4つのグループに無作為に割り振って、26週間の治療を行いました。
・Aグループ:薬物療法
・Bグループ:薬物療法&認知療法(カウンセリング)
・Cグループ:認知療法(カウンセリング)
・Dグループ:プラシーボ錠剤(薬効を確かめる為の、本物と見分けがつかない偽薬)
12ヶ月後のグループ別の回復率は、以下の通りでした。
・Aグループ:24%
・Bグループ:40%
・Cグループ:68%
・Dグループ:4%
社会不安症の治療には、薬が処方されるのが一般的です。
しかしこの研究では、薬物療法を併用せずに、認知療法のみを行ったグループが、もっとも高い回復率を示しました。
我々の治療結果は、患者にとって非常に大きな可能性を秘めていると言えます。
出典:Psychotherapy and Psychosomatics
https://www.karger.com/Article/FullText/447013
薬を一切使わず、認知療法のみを行ったグループの回復率が一番高かったのは意外です。
この研究で行われた認知療法とは、患者自身の考え方や感じ方の癖に働きかけて、意識の向けかたを調整したり、精神的なトレーニングをしたりするものでした。
患者は自分にあった効果的なテクニックを学ぶことで、緊張や不安をコントロールできるようになったと考えられます。
患者の立場になって考えてみれば、薬とカウンセリングを併用した場合、自分にとってどっちが効果的なのかが分かりにくいのかもしれません。
自分が努力して思考の癖を調整したからなのか、それとも単に薬の成分が効いているだけなのか?
そのことが明確に分かる方が、本人の納得度が高くなる気がします。
それで、薬とカウンセリングを併用するよりも、カウンセリングのみの方が回復率が高かったのかもしれません。
本人にとって何がベストの治療かは専門家の判断に委ねるしかありませんが、重症化する前に受診するのが一番ですね。
もし子どもがあがり症の場合、単なる個性なのか? それとも病気で治療が必要なのか?
親では判断が難しい時ってあるものです。
必要に応じて、専門家の判断を仰ぎたいものです。
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