残念ながら、親の離婚、家族との死別、病気、その他の辛い人生経験など、人生の初期段階での逆境は、思春期の子どものうつ病リスクを高めてしまいます。
また、幼少期にストレスを受けることもうつ病のリスクを高め、生涯にわたって不安やストレス反応が亢進する傾向があるとも言われています。
そのため研究者達は、将来の世代の幸福のため、世界中の若者が回復力を高め、うつ病のリスクを軽減するための実用的で手頃な方法を見つけようとしています。
最近の研究で、ポジティブな人生経験を思い出すことは、若い世代のうつ病リスク低減に役立つ可能性があることがわかりました。
サマリーをシェアします。
2019年、イギリス ケンブリッジ大学のエイドリアン・ダール・アスケルンド博士を筆頭著者とする、楽しい昔の思い出や幸せだった過去の生活を思い出すことが、ティーンエイジャーのうつ病に対する回復力を強化するかもしれないとの研究結果が発表されました。
今回の研究には、ケンブリッジ大学の近くに住む、うつ病のリスクがあるティーンエイジャー427名(平均年齢14歳)が参加しました。
参加者は、まず「幸せ」などの特定の単語を示されて、その単語に関連した楽しい出来事を思い出すように求められました。
続いてインタビューを受け、過去12ヶ月間に起こった辛く有害な人生経験の頻度を自己申告しました。
さらに、過去2週間の間に経験した抑うつ症状や否定的な自己に関連する思考についても自己申告してもらいました。
最後に、参加者の唾液サンプルを採取してコルチゾールレベルを測定しました。
コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれることもある、副腎皮質から放出されるステロイドホルモンで、ストレスフルな状況で上昇することが知られています。
1年後、再度インタビューと唾液検査を行って、データを分析しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、具体的な幸せの記憶を思い出し、ネガティブな考えを減らした参加者は、1年間にわたってコルチゾールレベルが低下し、ネガティブな自己認知が減少しました。
2、コルチゾールの値が低かった参加者は、その後1年間でうつ病を発症するリスクが減少しました。
3、今回の研究は、ポジティブな人生経験を想起することが、人生初期にストレスを受けた経験を持つティーンエイジャーのメンタルヘルスに役立つ可能性を示しています。
4、ポジティブな記憶を思い出すよう人を訓練することは可能であり、これはうつ病のリスクがあるティーンエイジャーを支援する有益な方法となるでしょう。
出典:Nature Human Behavior
この研究ではティーンエイジャーが対象になっていますが、大人であっても思い当たる節があります。
誰だって、突然の不幸に見舞われたり、苦しみが長く続いたりすると、つい自分を責めたり軽蔑したりしたくなってしまいがち。
そんな事態に備えて、普段から幸せな出来事を懐かしみ、それを写真や音声や動画などで蓄積し、スマホ等に保存していつでも思い出せるようにしておけば、レジリエンスを高める効果がありそうですね。
そう考えると、子ども時代に楽しい思い出を作ってあげる事や、家庭内を明るく楽しい雰囲気に盛り上げる事は、親が子にプレゼントできる一生の宝物という事になります。
私が子どもだった時代は、将来どんな荒波に揉まれても折れない強い心を育てるためには、スパルタ式で厳しく躾けるべきとの考えが一般的で、私の親も厳格だったことを考えると、真逆です。
親として、つい子どもの学力とか進路とかに注目しがちですが、困難にめげずに強く生きていく力も重要ですから、良い思い出を沢山作ってあげたいもの。
親子で幸せな時間を過ごすことへの罪悪感がなくなると、ますます遊びも楽しめて印象深いものになりそうです。
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