思春期の子ども達が夢中になるものの一つが、流行の音楽だったりします。
「NO MUSIC NO LIFE」(音楽無しでは生きていけない)なんて、カッコつけてる姿は可愛いもの。
10代の若者にとって、自分のアイデンティティの側面を他人に伝えるために、音楽は大切な要素で、例えば初めて出会う学生同士でも、共通の音楽の趣味によって親しくなったりします。
もともと人類にとって音楽は単なる娯楽ではなく、人と人とがつながる手段なのだそう。
研究で、音楽が共感や意思疎通を促進し、ストレスを軽減し、気分を良くしていることがわかりました。
サマリーをシェアします。
2021年、イスラエルのバル=イラン大学のデイビッド・M・グリーンバーグ博士を筆頭著者とする、人々が一緒に音楽制作に関わるとき、社会的機能の鍵となる脳神経ネットワークに何が起こるかを、社会神経科学、音楽学、進化論をもとに考察した研究結果が発表されました。
研究者は、エルサレム・ユース・コーラスと呼ばれる、東エルサレムと西エルサレムのアラブ人とユダヤ人のティーンエイジャーが集まって、お互いの文化から歌を学び、対話するグループを研究しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、一緒に音楽を作ることで、相手が何を考えているのか、どのように感じているかを理解し、共感できるうえに、「快楽ホルモン」と呼ばれるドーパミンが放出されました。
2、一緒に歌うことで、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌され、「ストレスホルモン」と言われるコルチゾールが低下しました。
3、私たちの社会的つながりの感覚は単なる主観的なものではなく、重要な脳のメカニズムに根ざしています。
4、私たちは音楽を通して人とつながり、交流することができますが、音楽は人間の進化の根幹をなすものであり、社会的な結びつきを独自に表現する手段と言えます。
5、私たちの研究が、異文化の人々を音楽で結びつける草の根的なプログラムの増加につながることを願っています。"
出典:American Psychologist
https://doi.apa.org/fulltext/2021-55326-001.html
誰かと一緒に音楽を楽しむことで、脳内の神経伝達物質の量に変化が起きて、喜びや幸福感が高まり、ストレスが軽減されているのだそうですから凄い効果です。
狩猟採集生活をしていた頃の私たちの祖先は、おそらく何万年もの間、音楽を集団的な結びつきのために活用していたと考えられています。
そしてそんな音楽の持つパワーは現代でも健在で、子ども達の共感や友情を育み、単なるエンタメ以上の心強い存在となっているのですから、温かい目で見守って行きたいものです。
ちなみに筆頭著者のグリーンバーグ博士は16歳からツアーに参加し、現在も演奏を続けるミュージシャンでありながら、神経科学者で、心理学者で、ビッグデータ科学者なのだそう。
多彩な才能にびっくりします。
以前は一つの専門性を極める生き方が素晴らしいと思われがちでしたが、インターネットで多くの情報に手軽に触れられる現代では、やりたいことがたくさんあって一つに絞れず進路に悩む子どももいます。
これからは、そんないくつもの才能を兼ね備えているような人がどんどん活躍できる時代がくるかもしれませんね。
↓いいね を押していただけますと励みになります。