一般的にリラクゼーションは副交感神経系を活性化するので、体の休息、食物の消化、生体恒常性の維持を助け、不眠症や不安神経症に効果的であると考えられています。
ストレス解消のため、ヨガや呼吸法やマインドフルネス瞑想などが知られるようになり、職場で取り入れている企業まであるそう。
ところが心理学では「リラクゼーション誘発性不安」(Relaxation induced anxiety)という現象が知られています。
これは、リラクゼーショントレーニングによって、余計に不安が募ってしまう現象のことです。
昔から不安症に悩む人の一部にリラクゼーション誘発性不安があることが知られていましたが、その原因を突き止めた研究があります。
サマリーをシェアします。
2013年、アメリカ ミシガン大学のハンジュー・キム氏を筆頭著者とする、リラクゼーション誘発性不安の仕組みを調べた研究結果が発表されました。
研究には、32名の不安症の人、34名のうつ病患者、30名の健常者の、あわせて96人が参加しました。
参加者にリラクゼーショントレーニングを行った後、恐怖や悲しみを誘発する動画を視聴してもらいました。
動画によって不安な感情が高ぶったら、再びリラクゼーショントレーニングを実施してもらいました。
最後に全員にアンケートを取って、不安のレベルを測定しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、不安症に悩む人ほど、感情の変化に敏感な傾向がありました。
2、感情の変化に敏感な人は、平安な心の状態から急激に不安な気持ちが高まることをとても恐れていました。
3、そのため、リラックスした幸福な状態になるよりも、不安な状態を維持するために心配することを好みました。
4、なぜなら彼らは、「リラックスしようとすると何か悪いことが起こるのではないか」と心配しているからです。
5、何か悪いことが起こった時の気持ちの落ち込みを避けるために、わざと自分を不安にさせるのです。
6、私たちが心配することのほとんどは結局起こらないため、脳内では「心配したけれど起こらなかったから、心配し続けるべきだ」という思考が強化されてしまうのです。
7、研究者達は、このメカニズムを「コントラスト回避モデル」(Contrast Avoidance Model)と名付けました。
8、リラクゼーション誘発性不安になりやすい人は、不安症の人に多く、彼らは他の人以上にリラクゼーションを必要としている可能性があります。
出典:Journal of Affective Disorders
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165032719303593?via%3Dihub
不安になりやすい人は、幸せな状態から不安な状態に転落するのを恐れるあまり、自分から進んで不安なままで居ようとするとのこと。
わざと自分を不安にさせても実際には役に立たず、より惨めな気持ちにさせるだけですので、こういう人ほど、リラクゼーショントレーニングを積んでおいたほうがいいそう。
複数ある対処法のうちの一つが、リラクゼーショントレーニングで経験した感情の変化を受け入れ、リラックス状態に馴染んでゆくというもの。
それが無理なら、リラクゼーショントレーニングを中止して誰かに相談したり、他のトレーニングを試したりするのも良いそうです。
要は、自分に向いている方法を選択するということ。
不安になることで逆に安心する感覚って、わからなくもありません。
私自身、上手く行きすぎている時ほど「こんなの今だけなんじゃないか」という不安に駆られますから。
子育てをしていても、学校の成績やスポーツの試合で良い結果を出し、周囲に一目置かれているような時こそ、かえってピリピリしている姿を目にすることがありますね。
本人は強がっていても実は強く緊張していて、必死になって安心感を求めているのかもしれませんから、親として追い込みすぎないよう気をつけたいものです。
↓いいね を押していただけますと励みになります。