ふと周囲を見渡せば、若い頃ちょっと性格がキツめだった人が、年を重ねずいぶん穏やかな性格に変わっていて、ほっこりする事があります。
例えば私の父など、昔は真面目で神経質な性格で、些細なことでイライラしては大声で怒鳴りつけるほど短気な人でした。
それが、今ではすっかり好々爺になっていて、楽しくお酒を飲める間柄になっているのですから、人生何があるか分からないもの。
もしかしたら、あなたの身近にも、似たような例があるかもしれません。
研究によれば、これは単なる気のせいではなさそう。
なんと、人は年を取るにつれて思いやりが増し、他の人を助ける可能性が高まり、寛大になる傾向があるそうです。
研究のサマリーをシェアします。
2022年、アメリカのクレアモント大学のポール・ジョセフ・ザック博士を筆頭著者とする、年齢とともに変化する神経科学物質の量と生活の満足度について調べた研究結果が発表されました。
研究には、クレアモントカレッジの学生、近隣都市の住民など18歳~99歳の103名が参加しました。
参加者は、自分の感情や価値観や人生満足度を調査するアンケートに回答し、血液サンプルを採取しました。
次に、癌で亡くなった2歳の息子への気持ちを語る父親のビデオメッセージを視聴しました。
ビデオ視聴の後に、自分が感じている感情を調査し、2回目の採血を行いました。
その後、任意で慈善団体への寄付を募りました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、参加者が視聴したビデオの内容に共感すると、脳内ホルモンであるオキシトシンが放出されていました。
2、他の年齢層と比較して、高齢の参加者が最もビデオの感情的な刺激に反応し、オキシトシンの値が増加していました。
3、慈善団体への寄付金の平均額は、18〜35歳の若年層は4.64ドル、36〜64歳の中年層は9.30ドル、65〜99歳の高齢者は12.45ドルで、高齢であればあるほど寄付額が高くなりました。
4、神経化学物質と年齢の変化を測定したところ、年齢以外の要素と寄付金額との間に関連は見られませんでした。
5、実験で最も多くのオキシトシンを放出した人々は、寄付活動に寛大であるたけでなく、他の親切な行動にも積極的な傾向にありました。
6、オキシトシンの放出は年齢とともに増加傾向にあり、放出量が高いほど人生の満足度も高まっていました。
7、この研究は、オキシトシンの放出量が増えれば増えるほど、人々はより親切な行動をするようになるため、脳が更に多くのオキシトシンを放出するようになるという好循環を示唆しています。
出典:Frontiers in Behavioral Neuroscience
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnbeh.2022.846234/full
「愛のホルモン」としても知られるオキシトシンは、人々の親切な行動に関連していると言われています。
オキシトシンは人間同士のつながりと思いやりを促進し、人々が共感を感じるように促すことが、これまでの研究で分かっています。
日本では若さがもてはやされがちですが、この研究結果を見る限り、年を重ねることは悪い事ばかりではなさそう。
年をとるごとに身体は衰えてゆくと考えられていますが、オキシトシンを生成、放出する機能は、加齢により衰えることがないとされています。
そして、オキシトシンが沢山出ている高齢者は、若い人と比較して生活満足度が高まっていたとのことですから、素敵ですね。
また、共感力が高い人ほど、名作映画などを視聴し感動した後にオキシトシンが大幅に増加するそう。
日本人では特に男性が感極まって泣くなんて恥と考えられていますけれど、たまには一人になって泣けるビデオを視聴し、こっそりと感動の涙を流し、オキシトシンを満たしておくのも幸せのカギかもしれません。
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