依存症の原因の一つが、相対的剥奪によるネガティブな感情だとする考え方があります。
「相対的剥奪」(Relative Deprivation)とは、他人と自分を比較して「自分は満たされていない。自分には他の人にはあって当然のものがない。」と思う感覚のことです。
社会が豊かになる程、他人と比べることによる心理社会的ストレスが高まって行くとも言われ、周囲からはそんなに悪い状況に見えないので、本人の悩みが理解できなかったりします。
研究によれば、相対的剥奪を克服するには明るい希望が有効だそう。
サマリーをシェアします。
2020年、イギリス イースト・アングリア大学のシャリア・ケシャバルズ博士を筆頭著者とする、相対的剥奪が希望によって調整されることを調べた研究結果が発表されました。
一つ目の研究には55人のボランティアが参加しました。
まず、相対的剥奪と希望をどの程度感じているかをテストしました。
続いて世帯収入、年齢、性別などのアンケートをもとに、自分の生活状況が同世代の人たちと比較してどれだけ恵まれていないかを伝え、相対的剥奪を誘発しました。
その後、ギャンブルゲームを行い、リスクを冒して実際にお金を得るチャンスに挑戦しました。
二つ目の研究には、過去1年間に少なくとも1度はギャンブルをしたことがある122人のボランティアが参加しました。
彼らは、相対的剥奪と希望をどの程度感じているか、ギャンブル依存症かどうかを測るアンケートに回答しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、一つ目の研究で希望のスコアが高かった人は、ゲームの中でリスクを負う可能性が非常に低くなりました。
2、それに対して、希望のスコアが低かった人は、リスクを負うことが多くなりました。
3、相対的剥奪は、怒りや恨みなどのネガティブな感情を引き起こし、リスクを冒すなどの不適切な対処法を選択させる可能性がありますが、希望がギャンブル依存症から人々を守ることがわかりました。
4、二つ目の研究で参加者のギャンブル依存度合いを調べたところ、33人(27%)はギャンブルの問題を抱えておらず、32人(26%)は低レベルの問題を抱えており、46人(38%)は何らかの悪影響につながる中レベルの問題を抱えており、11人(9%)はコントロールを失う可能性のある問題ギャンブラーでした。
5、これらの依存度合いを、相対的剥奪と希望のスコアで比較してみると、相対的剥奪度が高い人であっても、希望のスコアが増えるほど、ギャンブル行動をコントロールしやすくなっていました。
6、興味深いことに、相対的剥奪度が低い人では、希望のスコアとギャンブル依存症の重症度との間に有意な関係は見られませんでした。
7、相対的剥奪度が高い人に希望を育むことで、過食やギャンブル依存症などの有害な行動から守ることができる可能性があります。
出典:Journal of Gambling Studies
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10899-020-09989-4
世の中には、相対的剥奪により、何かに依存して歯止めが効かなくなってしまう人と、その経験を活かし自分で状況を改善して行く人がいます。
研究によれば、その別れ目は、希望を持っているかどうかの差にあるそう。
希望とは、前向きな目標、それを達成する方法、それを実行するための精神的なエネルギーを持つことだと言えます。
希望が依存性から人を守る役に立つとは思いもよりませんでしたが、あり得る話です。
例えば子どもがゲームに熱中しすぎていると親は不安になりますが、思春期って自意識過剰になりがちでつい他人と比べてしまいますから、相対的剥奪度が高いのかもしれません。
親が無理やりゲームを禁止して余計に火に油を注いでしまうなら、未来へ希望を持つよう話題を振ってみるのは試す価値がありそうです。
そういえば、「もっと勉強しなさい」ってよく聞く親のセリフですけど、「希望をしっかり持ちなさい」って聞いたことがありません。
誰もが身の丈に合った幸せを感じられて、希望が持てる社会になればいいですね。
毎日忙しくて、こんな大事なことを疎かにしていたのかも。
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