子どもの好奇心は大切に育むべきと考えられていて、そのための育児法も巷にはあふれています。
好奇心は強力なモチベーションになるし、勉強を頑張るためにも将来やりたいことを見つけて自立するためにも必要だから。
人類の未知の世界への好奇心が様々な発明につながって、科学を発展させてきたのも事実。
しかし私たちの好奇心は非常に強力で、明らかなメリットがない、苦痛や不快を伴う可能性のある結果を、たとえその結果を完全に回避できる能力があったとしても、選択させてしまうことがあります。
傷つくとわかっているのに、ネット上の批判コメントをわざわざ探して読みに行ったり、不快になるとわかっているのに、ゴシップ記事を最後まで読んでしまったりするのも、人間の好奇心の強さによるものだそう。
なぜ私たちはこんなことをしてしまうのでしょう?
人間にはもともと不確実性や謎を解決したいという心理的欲求が備わっており、この欲求は非常に強力で、「知ったら自分が傷つく」「知らない方が幸せ」と分かっていても好奇心に抗えないそう。
このような好奇心のマイナス面は「病的な好奇心」(Morbid Curiosity)と呼ばれ、脅迫的なものや嫌悪を感じるものを見たくないのに、目を逸らすことができない感覚のことです。
病的な好奇心の強さと、その対処法に関する研究があります。
サマリーをシェアします。
2016年、アメリカ シカゴ大学ブース・ビジネススクールのクリストファー・K・ケイシー氏を筆頭著者とする、好奇心を満たすために、自ら進んで嫌悪行動をしてしまう傾向を調べた研究結果が発表されました。
研究者たちは、芯を出すためにノックすると電気ショックが発生するよう細工をしたシャープペンシルと、普通のシャープペンシルを用意しました。
ある実験には、54人の大学生が参加し「用意したシャープペンシルを使って時間を潰してください。」と言われました。
その際、一部の学生には、赤いシールを貼った細工されたシャープペンシル5本と、緑のシールを貼った普通のシャープペンシル5本が渡され、「ショックを与えるかどうかでシャープペンシルが色分けされています。」と伝えられました。
一方、他の参加者には、2種類とも同じ黄色いシールを貼ったシャープペンシル10本が渡され「電気ショックの細工を施したものと、普通のものが混ざっていますが、実際にノックしてみないと判りません。」と伝えられました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、結果がわかっている学生は、平均して普通のシャープペンシルを1回、電気ショックが発生するシャープペンシルを2回ノックしました。
2、それと比べて結果が不確かな条件の学生は、平均してシャープペンシルを5回ノックしました。
3、赤、緑、黄色のシャープペンシルを10本ずつ見せた別の実験でも、この結果と同じく、結果がはっきりしないシャープペンシルの方が、結果がはっきりしているシャープペンシルよりも多くノックされました。
4、さらに他の実験で、自分の選択がもたらす結果を予測させることで、好奇心の力が弱まる可能性があることも示唆されました。
5、好奇心は人間にとって幸せなものであると同時に、災いをもたらすものでもあると言えます。
6、私たちは、好奇心を満たすために、何が起こるかを考えずに情報を探してしまうことがよくあります。
7、この、病的な好奇心の悪影響を軽減するには、長期的な結果を考えることが有効だと言えます。
出典:Psychological Science
この研究によれば、病的な好奇心への対処法は、「もし興味の赴くままに行動したら、その後どうなるか?」をイメージすることだそう。
そう言えば、私が小学生の時、子どもが火遊びをして家が全焼してしまったというニュースがテレビで流れたことがあります。
その時父親に、「もし美和がちょっとした軽い気持ちで火遊びをして、それが家に燃え移って全焼したら、寝るところがなくなるし、料理ができないからご飯も食べられない。着替えもないから学校にも通えなくなる。」と説明されて恐ろしくなり、何が何でも絶対火遊びはしないと固く心に誓ったものです。
危険性のあることを全て禁止しようとしても、好奇心旺盛な子供ほど余計に興味を掻き立てられてしまって上手くいかないもの。
そんな子どもの好奇心を否定するのではなく、どんな災いが起きるのかを子供でもわかるようにイメージさせるのは、安全対策として有効そうですね。
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