「共感覚」(Synesthesia)と呼ばれる現象があって、「文字や数字に色がついて見える(色字)」、「音を聞くと色を感じる(色聴)」など、通常の感覚に加えて別の感覚が無意識に引き起こされるという人達がいます。
それ以外にも「味で形を思い起こす」、「痛みと色がリンクしている」など150種類以上の共感覚が確認されていて、それぞれの決まったパターンは生涯変わらないといいます。
近年は日本でも研究が進みつつありますが、海外では以前からこの現象についての研究がなされてきました。
サマリーをシェアします。
2005年、オーストラリア マッコーリー大学のアニーナ・N・リッチ教授を筆頭著者とする、共感覚を持つ人の特徴や感覚を調査した研究結果が発表されました。
研究には、文字、数字、言葉に共感覚を持つ色字共感覚者150名が参加しました。
参加者にアンケートを実施し、アルファベット、数字、単語、曜日、月、動物名、地名、職業、人名、色名などの名詞の11種類150項目について、それぞれの共感覚を説明してもらいました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、共感覚者が特定の文字や数字によって誘発される色には、驚くほどの一貫性がありました。
2、例えば、「R」は36%の人が赤に、「Y」は45%の人が黄色に、「D」は47%の人が茶色に感じていました。
3、多くの共感者は、文字、数字、単語を見たり聞いたり考えたりすると、その色が現れると報告しました。
4、同様の傾向は、色と文字や数字を関連付けるように指示された非共感者のグループにも見られました。
5、これらの結果から、色字共感覚の発達には、誰もが経験する初期の学習経験が組み込まれていることが示唆されました。
6、脳の臨界期の初期にこのような配列を学習することで、語彙と色のつながりの特定のパターンが決まり、このパターンが他の単語にも一般化するのではないかと推測されます。
7、また、オーストラリア全体で芸術関係の職についた人は2%なのに対し、色字共感者では24%となっており、共感覚者は芸術的な活動に従事する傾向が高くなりました。
出典:Cognition
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0010027704002094?via%3Dihub
共感覚を持っている人に会ってみたいですね。
彼らは芸術的センスに優れているという傾向が、いくつかの調査で明らかになっています。
アーティストなどの表現者や芸術家などに共感覚がある人が多いという研究や、芸術大学の学生では共感覚者の割合が高くなるという調査結果もあるそう。
共感覚は病気ではなく、知覚にまつわる脳の現象ですが、他者からは判断がつきにくく、精神疾患と間違われていた時代もあったそう。
現代でも、事情を知らない大人には、共感覚を持つ子どもが「頭がおかしい」「目立ちたがり」と誤解されたり、悪ふざけをしているように見えたりしてしまうことも…。
以前は共感覚を持つ人はごく僅かと考えられていましたが、脳科学の発展で研究が進むにつれて、意外と多くの人がこの未知の感覚をもっているのではないかと考えられるようになってきています。
子どもが突然不思議なことを言い始めたら、親として驚いてしまうかもしれませんが、共感覚のことを知っていれば、「もしかすると、この子は共感覚者かもしれない」と、ピンと来るかもしれません。
もし自分の子どもが共感覚者だとわかったら、治そうとしたり隠そうとしたりするのではなく、個性の一つとして受け入れて、サポートしてあげたいですね。
共感覚という現象を知っていれば理解するための努力ができますから、こうした知識を得ておくのは有用だと思います。
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