コロナ禍により社会的に距離を置くことが推奨されています。
感染防止の為の止むを得ない措置とはいえ、人と会う機会の減少は、私たちの心身に想像以上の悪影響を及ぼしていることがわかりました。
研究のサマリーをシェアします。
2020年、カナダ マギル大学のダニーロ・ボズドク博士を筆頭著者とする、社会的な孤立が人間の脳や心身に及ぼしている悪影響について調べた研究結果が発表されました。
研究では、148件の疫学研究(合計30万人程度)を照合し、死亡率に影響を与える共通要因を明らかにしました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、人間は、非常に社会性の高い生き物であり、赤ちゃんからお年寄りまで、良い対人関係を築くことは、ストレスを軽減し、生きていく上で非常に重要であることが明らかになりました。
2、コロナ禍により、私たちは社会的な孤立を経験していますが、これまでの研究では、苦難を乗り越える人間の回復力は、社会的なつながりの豊かさと強さ、そしてグループやコミュニティへの積極的な関与にかかっていました。
3、社会的に孤立すると、推論力、記憶力、ホルモンバランスなどの脳機能に悪影響を及ぼし、精神疾患にかかりやすくなり、身体的な健康や寿命を損なっていました。
4、反対に人間関係が充実していると、免疫機能が強くなり、体内の炎症レベル・血圧・体重の低下につながり、全体的な生理機能が強くなる傾向にありました。
5、良い友人に恵まれ、人間関係が豊かであればあるほど、病気になる可能性が低くなり、たとえ病気になっても早く治り、手術をしても早く回復し、長生きすることができていました。
6、友人が私たちの健康や幸福にこれほど劇的な影響を与えるという事実から、友人の数が多ければ多いほど良いと考えるかもしれませんが、私たちが一度に管理できる友人や家族関係の数は、認知的制約によって150人程度に制限されることがわかりました。
7、しかしこれには個人差が大きく、年配者より若者、男性より女性、内容的な人よりも外交的な人の方が友人の上限数が多くなり、その差はおよそ100人〜250人の間でした。
8、誰かを強制的に友人にすることはできませんが、スポーツクラブ、慈善団体、趣味のサークル、自治会など、より多くのグループに参加することは、孤独感を改善し、うつ病になるリスクを減らし、病気になる可能性が低下するという重要な効果があることがわかりました。
出典:Trends in Cognitive Sciences
幼少期に親のネグレクトなどで十分な愛情を与えてもらえないと、深刻な心のダメージとなることはよく知られています。
ところが社会心理学的な研究によれば、良い対人関係を築くことは、誰にとっても脳や心身の健康のために不可欠なことだそう。
興味深いのは、友人は多ければ多いほど良いわけではなく、適正値には個人差があるということ。
友人の数を他人と比べるのではなくて、自分が適正と思えるかどうかが大事ということになります。
社会的孤立は命に関わる病気ではありませんが、ジワジワと人の脳や心身の健康を蝕み、寿命を縮めているとは恐ろしい。
たとえ会えなくても、ねぎらいや感謝の気持ちを言葉や贈り物で表現し、「あなたは孤独ではありません。私は気にかけていますよ。」というメッセージを伝えることは、こんな時期だからこそ非常に貴重ですね。
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