辛い子ども時代を過ごした場合、その影響が生涯に及ぶ場合があるそうです。
大人になって、子ども時代とは周囲の環境も、人間関係も、ガラッと変わったとしても、子ども時代のストレスの影響を受け続けるとは気になります。
なんと、幼少期のストレスが遺伝子に痕跡を残し、それが数十年後になって発見されることがあるそうです。
サマリーをシェアします。
2018年、ウィスコンシン・マディソン大学のリード・アリッシュ神経外科学教授らは、ストレスの多い環境で育った子どもと、比較的穏やかな環境で育った子どものDNAの比較研究結果を発表しました。
研究には9歳から12歳の女児22名が参加しました。
参加者の半数は非常に高いレベルのストレスを経験し、残りの半数は正常レベルのストレスを経験していました。
予想通り、高レベルのストレスにさらされている子ども達には、より多くの問題行動が起きていました。
研究者たちは、DNAの中のメチル基と呼ばれる分子を調べました。
DNAのメチル化は、食べ物、運動量、人生経験などにより変動します。
DNAにメチル化が起こったとしても、DNA情報が変わるわけではありません。
しかし、メチル化の部位によって、DNAの利用方法や、遺伝情報の表現方法が変わります。
研究の結果、高いストレスの影響により、122個の遺伝子がメチル化の影響を受けており、14,000個以上の遺伝子に変化が起きていました。
研究者たちは、幼少期のトラウマによる分子レベルの変化が、トラウマの後10年ほど経ったあとでも続いていることを発見しました。
研究の結果、ストレスの多い環境で育った子供は、大人になってからうつ病、不安障害、気分障害になる可能性が高いことが明らかになりました。
出典:Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-018-29107-0
私達はDNAによる遺伝子情報によって作られています。
だから親子で顔や体型や気質が似ていたりします。
その一方、親子で顔も性格も全然似ていない場合があります。
沢山あるDNAのどの情報をONにして、どの情報をOFFにするか?
それを左右する仕組みの一つが、DNAのメチル化です。
研究ではこれにストレスが関与していることが明らかになりました。
幼少期の強いストレスで遺伝子が影響を受けると、大人になってストレスが消滅したあとでもその影響が続くということです。
子ども時代に深い心の傷を負ってしまったら、その痕跡が遺伝子レベルで記録され、生涯コピーされ続けてしまうということ。
時が経てば辛さを忘れられるというけれど、過去の苦しみに耐えるだけでは解決できないケースもあるかもしれません。
この研究のような遺伝子解析の研究が、将来トラウマの診断や治療に役立つことを願います。
今後も勉強を続け、新しい情報を見つけたらお知らせしますね。
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