心理学では以前から「質問行動効果」(Question-behavior effect)が知られています。
これは、行動に関する質問に答えることで、その後の行動準備がスピードアップするというものです。
つまり、成し遂げたい目標があれば、宣言するよりも質問したほうが叶いやすいということになります。
「質問行動効果」が、実際に人生の様々な分野で効果を発揮することを分析によって裏付けた研究があります。
サマリーをシェアします。
2015年、アメリカ カリフォルニア大学アーバイン校のエリック・R・シュバンゲンベルグ教授を筆頭著者とする、質問行動効果を定量的に測定し、そのしくみを考察した研究が発表されました。
研究者達は、1973年から2012年にわたる質問行動に関する研究を検索し、84件の論文に掲載された186件の質問行動効果の内容を分析しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、目標とする行動について人々に(あるいは自分自身に)質問することは、シンプルな割には強固な影響を及ぼしていました。
2、質問行動効果は、広告、オンラインメディア、対人コミュニケーションなど、ありとあらゆる行動領域において一貫して有意な行動の変化をもたらしていました。
3、その中でも特に、個人的にも社会的にも規範として受け入れられているような行動を促す質問をした場合、もっとも効果が強くなりました。
4、例えば、「野菜を毎日食べますか?」「ボランティア活動に参加しますか?」のような質問をすると、これらのポジティブな行動を増やすことができました。
5、重要なのは、相手に決定的な「YES」または「NO」の答えを選択させる質問をすることです。
6、興味深いことに、質問がコンピューターまたは紙と鉛筆の調査により管理されたときに、質問行動効果が最も効果的になりました。
7、なぜならば、「来月から本気で健康に気を配る予定です」「時間が許せば少しはボランティア活動に参加できます」のような説明の余地がなく、「YES」または「NO」のどちらかの方法でコミットせざるを得ないからです。
8、質問行動効果が機能する理由についてはいくつかの理論があります。認知的不協和と関係があるのではないかと考えられています。
9、「認知的不協和」(Cognitive dissonance)とは、あなたの理想的な自己があなたの本当の自己と一致せず、矛盾を抱えた状態のことです。
10、あなたが目標を達成したいと思っても、あなたの行動は目標を達成する行動と一致していないかもしれません。
11、ですから、誰かがあなたが目標を達成するつもりかどうかを尋ねるとき、「NO」と答えると不快感を引き起こします。
12、あなたの不快感を和らげるために、あなたは「YES」と答えてしまいます。
13、そうすれば、あなたが行使しようとしているというあなたの予測は、自己達成的な予言に変わる可能性があるのです。
出典:Journal of Consumer Psychology
https://myscp.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1016/j.jcps.2015.12.004
なるほど。
確かに「YES」と答えてしまうと、やらざるを得ない気持ちになりますね。
親なら誰だって、子どもと「受験合格のため、毎日〇時間勉強する」のような目標を立てるのは要注意だということが分かっていると思います。
たいてい「なんで決めた勉強をやらないの?」と、不毛な親子バトルに発展してしまいますから。
勉強嫌いな子どもに対して、「受験勉強をちゃんとやることは将来のために重要なのですよ」と説教するよりも、質問でやる気にさせる方が親も負担が少なくなります。
例えば「将来に備えて今のうちに勉強しておくつもりなの?」のように尋ねてみるのです。
質問するだけで「勉強は重要であり、やらない場合には不快感を引き起こす」ことを子どもは思い出してしまうでしょう。
人々が長期的な変化を生み出すためのモチベーションについては多くの理論がありますが、こんなにも単純な方法があるなんてびっくりです。
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