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友人の顔をして近づく危険ないじめ加害者

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生きていれば誰でも不幸なイベントに遭遇することがありますが、そんな時は怒りやフラストレーションを感じるもの。

 

対応としては、冷静に自己主張する、ひとまず逃げる、攻撃的になる、じっと耐える、など複数のバリエーションが考えられます。

 

中でも攻撃的になる場合が厄介で、心理学では攻撃方法は主に二つあるとされています。

 

一つが「反応的攻撃」(Reactive aggression)で、相手に怒り、何らかの攻撃行動をします。

 

例えば悪口を言われてカッとなり、衝動的に相手を叩いたりするケースです。

 

もう一つが「道具的攻撃」(Instrumental aggression)で、目的を達成するために何らかの攻撃行動を道具として用いる場合で、怒りを伴わない場合もあります。

 

例えばライバルを蹴落とすことを目的に人格を攻撃し、優越感を高めるようなケースです。

 

思春期の子ども達の中には、人気取りや学校内でのマウンティングのために、同級生を道具的攻撃で苦しめることが平気な生徒がいます。

 

彼らのいじめの動機について調べた心理学の研究があります。

 

サマリーをシェアします。

 

 

2020年、アメリカ カリフォルニア大学デービス校のロバート・ファリス教授を筆頭著者とする、思春期のいじめの特徴を道具的攻撃の理論を用いて明らかにした研究結果が発表されました。

 

研究ではアメリカの中高14校を対象に、9年生(日本の中学3年生に相当)と、10年生(日本の高校1年生に相当)の生徒3000人を対象にいじめ調査を行いました。

 

結果、次のようなことがわかりました。

 

1、道具的攻撃による思春期のいじめは同じ友人グループ内で発生しやすく、いじめの加害者と被害者には、共通の友人がいるという特徴がありました。

 

2、ほとんどのいじめが友人間で起きていましたが、それは真の友人ではなく、友人のふりをして近づいてくるいじめ加害者によるものでした。

 

3、彼らは最初のうちは親しい友人のように振る舞いますが、内心では相手を利用するだけの存在としか見ていません。

 

4、道具的攻撃によるいじめ加害者の動機には「グループ内で自分が優位に立ち、人気者になりたい」という、思春期特有の承認欲求が関与していると考えられます。

 

5、いつも一緒にいる友達は、成績や人気で競い合わなければならないライバルでもあるため、それが道具的攻撃のリスクを高めている可能性があります。

 

6、道具的攻撃によるいじめを無くすには、いじめの加害者になることで仲間達から一目置かれてしまうような、現在の状況に働きかける必要があります。

 

7、従来のいじめの場合は、加害者が抱える心理的飢餓感や家庭の問題が原因であると考えられてきましたが、道具的攻撃によるいじめの場合は、加害者の心の原因を探るのではなく、人気があることに高い価値を持たせないようにすると、いじめを減らせるかもしれません。

 

出典:American Journal of Sociology

 

https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/712972

 

 

なんと、道具的攻撃によるいじめの場合は、自分が周りから人気を得るという目的のために、ターゲットを定めて残酷な攻撃を加え、道具として利用するというのですから唖然とします。

 

一般に、いじめとは弱いものいじめのことを指しますが、道具的攻撃によるいじめのケースでは、仲良しグループ内で対等の立場を装いつつ、バカにして貶めたり、無理な要求をしたりして苦痛を与えるのです。

 

子ども達にとって重要なグループ内での序列は友人関係によって決まるため、自分の友人や友人の友人など、身近な同級生がターゲットとして利用されるのだそう。

 

被害者の立場からすれば、大切な友人だから仕方ないと我慢しているうちに、どんどん攻撃がエスカレートしてゆくのですから恐ろしい。

 

そんな道具的攻撃によるいじめ被害者に対しては「あなたにも至らないところがあるんじゃないの?」なんて軽々しいアドバイスをするのではなく、このような心理学的な仕組みを教えサポートしてあげたいもの。

 

将来的には、成績や人気というモノサシでお互いがランク付けされてしまう、学校教育システム仕組み自体も見直されるのかもしれませんね。

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