日本文化では子どもを「子宝」などと呼び、親になるのは素晴らしい体験として賞賛されがちです。
ところが海外の先進22カ国の調査では「親になると幸福度が下がる」という驚愕の結果が出ていて、これを社会学では「親ペナルティ」と呼んでいます。
「親ペナルティ」が起こる原因は、「育児に多くの時間やエネルギーが割かれる」「睡眠不足」「仕事と育児の両立が困難」「金銭面の負担増」などが挙げられています。
「親ペナルティ」が無視できるほど小さい国はノルウェーで、一番大きいのは育児に対する公的な支援制度がほぼ無いアメリカだそう。
そんな過酷な育児環境のアメリカで、「親ペナルティ」の男女格差の理由を調べた研究があります。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ ペンシルバニア州立大学のカドラ・マクドネル氏を筆頭著者とする、育児中の父親と母親の感情格差を調べた研究結果が発表されました。
研究者達は、アメリカ国勢調査局が収集した、育児活動に関する数千人分の親のデータを集めました。
父親と母親それぞれの、幸福度、育児の種類、育児時間、育児場所、育児参加率を分析しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、父親の方が母親よりも幸福度が高く、子育ての疲労やストレスが少ない傾向にありました。
2、その理由として、父親の方が週末の家族全員での楽しいレクリエーション活動を担当する傾向があることが挙げられます。
3、それに対して母親は、一般的に父親よりも育児時間が多いだけでなく、平日にさほど楽しくない雑多な育児を一人で沢山こなしていました。
4、育児内容にはより楽しいものと、そうでもないものがあります。
5、例えば家族で遊びに行くことと、深夜におむつを交換することとでは、心に与える影響は違ったものになるでしょう。
6、伝統的に育児は男性よりも女性のアイデンティティの中心と考えられてきましたが、母親も父親も子どもの世話をすることに高い意義を見出しており、性別による違いはありませんでした。
7、それにも関わらず育児による幸福度に男女差がある原因の一つは、親の子供への関わり方に関する著しい性差のためであると言えます。
出典:Journal of Family Issues
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0192513X19860179
日本の親の一人として、他人事とは思えない研究結果です。
日本だと、夫婦での家事の分担とか、育児時間の不平等とか、そういう話題が中心だと思います。
ところがこの研究では、夫婦間の「感動度合いの不平等」という男女格差を突き止めたそう。
今までこういう考え方をしたことがないのでびっくりです。
子どもを幸せに育てる方法については沢山の情報がありますが、その子ども達のために頑張っている親の幸福感について、これまであまり考えられてこなかったのは盲点な気がします。
だって子どもって親の笑顔が大好きだから、親が消耗していると悲しくなります。
会社に「パパとして育児を頑張っているのに妻が認めてくれない」って不満をこぼす男性社員がいるのですが、何とアドバイスすれば良いのか、ようやく分かりました。
子どもと一緒にお風呂に入ったり、公園で一緒に遊んだり、絵本を読んだりする、いわゆる表舞台的な育児は子どもに喜ばれるし、親としても感動度合いが高いのです。
それに比べて、子どもが食べ散らかした食卓の後片付けをしたり、大量の洗濯物の山を畳んだり、部屋の中の危険そうなものをあらかじめ遠ざけたり、一週間分の家事のスケジュールを立てたり、家計簿をつけて教育予算を管理したり、そんな裏方的な育児は、必要だけれど親としての感動度合いは低めです。
こんな風に、育児の「タスク量」の不平等ではなく、「感動度合い」の不平等で考えると、日本でも男女差ってありますね。
私自身はシングルマザーなので気が付きませんでしたが、ワンオペ育児で大変な分、子どもからもらえる元気も独り占めしていたということになります。
なのでもしこれが夫婦のどちらかに偏っていたら、確かによろしくありません。
子育てについては大変さばかり語られますけど、実は感動や喜びも沢山あるのですから、夫婦なら苦労も感動も分かち合いたいもの。
夫婦で育児を分担する時って難易度や経験値で振り分けがちですが、子育ての感動度合いに注目して平等に割り振るというアイデアは斬新です。
その為には「母親なんだからこれくらいできて当然」という社会の風潮や「父親がそんなことするのはおかしい」という同調圧力を無視することも前提になりそう。
夫婦間での育児の感動度合いの不平等をなくして行ければ、子ども達もより幸せに過ごせる気がします。
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