一般的に、子ども時代よりも大人になってからのほうが、社会は厳しくなるものだと思われています。
ところが、その場に子どもがいるだけで、大人は他の大人に対しても、より寛大で思いやりのある行動を取るのだそう。
そんな研究のサマリーをシェアします。
2021年、イギリス バース大学のルーカス・J・ヴォルフ博士を筆頭著者とする、子どもの存在が大人の社会的動機や善行を高めているかどうかを検証した研究結果が発表されました。
2019年3月、イギリス南西部の小都市バースのショッピングストリートでデータ収集が行われました。
二人の研究者が、子どもとは直接関連の無い、血液のがんに関する慈善団体のための募金集めを行いました。
彼らは慈善団体のロゴ入り募金箱を持ち、ロゴ入りセーターを着用しました。
そして一人の研究者が寄付を集め、もう一人が2分ごとに天候、通りを歩く子どもの数、大人の数を記録しました。
寄付が行われた際には、寄付者の性別と、子ども連れかどうかも記録しました。
最終的に得られた721個のデータを元に分析を行いました。
結果、次のようなことが分かりました。
1,子どもたちが周囲にいると、大人は慈善団体に寄付する確率が2倍になりました。
2,この効果は、大人が親でも親でなくても、男性でも女性でも、高齢でも若手でも同様でした。
3,加えて、献金者が男性でも女性でも、子供を連れていても居なくても、天候が良くても悪くても、時間帯がいつでも変わりませんでした。
4,子ども達は、大人たちの他人を思いやる気持ちを高めることで、社会に対して間接的に影響を及ぼしていると言えます。
出典:Social Psychological and Personality Science
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/19485506211007605
子どもがいると、大人の素行が良くなるんですって!
確かに、子どもが見ている目の前で、大人同士が口論したりルール違反をしたりするのは見苦しいもの。
大人ならば誰でも、子どもにはみっともない姿を見られたくないのが本音でしょう。
つまり子ども達は、大人たちが到底かなわないような、強い影響力を持っているということになります。
進化論的な観方をすると、人間社会では子孫の生存と繁栄を促進するために、集団内のメンバーが世話役を分担していたとされています。
おそらく、競争的で敵対的な集団で育つよりも、協力的で支援的な集団で育つ方が、子どもが生き延びて成長する可能性が高かったのでしょう。
大人同士が互いに寛大になり、良い人間関係を築いていけたのは、もしかしたら子ども達のお陰かもしれません。
そんな風に考えると、実は大人が子どもに助けられていることって、案外多い気がします。
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