アメリカ発祥の「ヘリコプターペアレント」という言葉があります。
それは過保護親の一種で、自分の子どもが傷ついたり、失敗したりしないよう、まるでヘリコプターが上空でホバリングしているかのように、子どもにつきまとい続け、上空で見張り続ける親のことです。
子どもが困難に遭遇しようものなら、すぐさま飛んでいって助けようとします。
子どもがイヤな思いをしないよう、子ども同士の揉め事にすぐ介入したり、子どものデートをこっそり観察したり、子どもの難しい宿題をかわりにやってあげたりするのです。
幼少期に失敗を重ねなかった子ども達は、完璧な自分しか認められなくなったり、完璧でない自分を好きになれなくなったりしてしまいます。
それによりうつ病になりやすくなるなど、アメリカでは社会問題にもなっています。
なぜ、子どもを愛する親たちがヘリコプターペアレントになってしまうのでしょう?
研究のサマリーをシェアします。
2020年、アメリカ、アリゾナ大学のクリス・セグリン教授を筆頭著者とする、親がヘリコプターペアレントとして行動する理由を調べた研究結果が発表されました。
一つ目の研究で、青年期の子どもを持つ親302名を対象とし、過保護傾向と完璧主義の度合いについて調査しました。
二つ目の研究で、青年期の子どもと親の2人ペア290組を対象に、子どもが認識する親の過保護傾向と親の完璧主義の度合いについて調査しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、完璧主義者の傾向が強い親ほど、過保護親になる可能性が高くなっていました。
2、完璧主義者は、完璧でありたい、成功したい、称賛を得たいという心理的特徴を持っています。
3、完璧主義者は、自分の子どもにも完璧であって欲しいと願っています。
4、子どもが達成するのを見たいのは、自分が良く見えるからです。
5、子どものことを気にかけていないわけではありませんが、彼らは子どもの成功によって自分の価値を測ります。
6、それは、完璧な親としての自分の成功を測るための基準なのです。
ヘリコプターペアレントのルーツは、アメリカにおける1970年代から80年代にかけての「自尊心の時代」にあると考えられます。
この時代には、褒めて自尊心を高めることが、悪い行動を改善する最良の方法だと考えられていました。
子どもたちのことを、実際に何かを成し遂げたからではなく、ただ存在しているという理由だけで、褒め称えるようになりました。
数十年が経ち、彼らは大人になり、今度は自分たちが子どもを持つようになりました。
彼らは、「あなたは特別で、偉大で、完璧だ」という文化の中で育ったため、それが完璧主義的な欲求を煽ります。
「私が本当に特別なら、私が本当に素晴らしいなら、私の子どもも特別で素晴らしいものでなければ、私は良い親ではない」ということになるからです。
このようなヘリコプターペアレントの罠に陥らないためには、キャリアであれ、人間関係であれ、趣味であれ、親としての役割とは独立した、自分の人生を生きることを認識する必要があります。
出典:Couple and Family Psychology
https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fcfp0000143
褒め育ては子供の自己肯定感を高めるので良いこととされています。
それを否定するものではありません。
親が自分の完璧さを演出するための小道具として、子どもを操ろうとするのがダメということ。
口ではあなたのためと言いながら、実際には親の見栄の張り合いに利用するためだったとしたら?
親の正しさを押し付けられ、自分の人生を自分で選ぶ自由を奪われるなんて、子どもとしてはたまったものではありません。
セグリン教授によれば、親の正解を押し付けるのは、完璧主義の強い親だけとは限らないそうです。
子育てに不安感の強い親も要注意とのこと。
不安を抱えた親は、自分の人生で犯した過ちを心配し、子どもが同じ過ちを繰り返さないように先回りしたいと考える傾向があるからです。
子育てに不安が全くない親なんていませんから、どんな親でもヘリコプターペアレントの罠に陥る可能性があるということ。
私も常に自分を省みて気をつけたいです。
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