これまでの研究で、幼少期のトラウマは自殺行動と関係がある事が分かっていますが、この関連性を調査した研究のほとんどは、欧米諸国や特定の集団を対象に行われてきました。
しかし欧米諸国と異なり東南アジアでは、家族のヒエラルキー、恥の考え方、儒教文化などに基づく伝統的な価値観を非常に重視する傾向があります。
ドラマやK-POPが日本でも大人気の韓国は、歴史的に家父長制の家族制度が採用されており、幼少期の体罰が容認されやすいそう。
そんな韓国で行われた研究のサマリーをシェアします。
2021年、韓国 全南(チョンナム)大学のキム・ソンワン教授を筆頭著者とする、韓国の一般市民を対象に、幼少期のトラウマと自殺行動との関連を調べた研究結果が発表されました。
本研究は、韓国の保健福祉省及び光州広域市が支援する「光州メンタルヘルスプロジェクト」の一環として実施され、光州広域市に住む市民1,490人が調査票に回答しました。
この研究では、子ども時代のトラウマ体験を「いじめ被害」「性的虐待」「親の体罰を含む身体的虐待」「精神的虐待」の四つに分類し、年齢、性別、学歴、その他のデータの偏りを調整しました。
結果、次のような事が分かりました。
1、幼少期に何らかのトラウマを経験した参加者は、生涯にわたって自殺計画や自殺未遂を経験する可能性が高くなりました。
2、「いじめ被害」「性的虐待」「精神的虐待」の経験を報告したのは女性が多く、「親の体罰を含む身体的虐待」の経験を報告したのは男性が多くなりました。
3、四つの分類の中で「情緒的虐待」が、最も強く自殺行動との関連を示しました。
4、今回の結果は、虐待を受けた韓国人が自分の中に原因を探し内在化することで、自尊心やレジリエンス(困難からの回復力)が低くなることを示唆しています。
5、そのため、韓国社会において、成人集団の自殺傾向やメンタルヘルスの問題を軽減するためには、幼少期の逆境を予防する必要があります。
出典:Chonnam Medical Journal
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8167439/
研究によれば、最もダメージが大きいのは、精神的虐待とのことですが、これは謙虚で内省的な価値観と関係がありそうです。
2016年、世界保健機構(WHO)が公表した世界各国の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)ランキングによると、韓国の自殺率は世界2位の26.9人、日本は世界7位の18.5人とのこと。
同じ東アジア圏の日本にも韓国と似たところがありますから、このような韓国の国を挙げた自殺防止の取り組みには見習うべきところがあります。
日本でも様々な自殺防止の取り組みがなされていますが、幼少期の逆境を予防し子供達のメンタルを守る取り組みは日本でも進めて欲しいですね。
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