これまでの研究で、睡眠不足は人がミスをする最大の原因の1つであることが明らかになっています。
睡眠不足により集中力が散漫になると、より多くのミスをしてしまうのです。
睡眠中のヒトの脳波を調べると、「ノンレム睡眠」(non-REM sleep)と「レム睡眠」(REM sleep)という、二つの睡眠段階に分類されることは良く知られています。
このうち、「ノンレム睡眠」は、脳波の活動レベルによって、さらに4つのステージに分かれているそう。
その中でもっとも深い睡眠とされるステージは「徐派睡眠」(Slow Wave Sleep)と呼ばれます。
この徐波睡眠こそが、最も重要で、最も回復力の高い睡眠段階です。
体が最もリラックスし、筋肉が楽になり、心拍数と呼吸数が最も遅くなり、成長ホルモンも分泌されます。
毎晩眠りに就くとすぐ徐派睡眠に入り、この段階でかなりの時間を過ごしますが、なんと加齢とともに徐派睡眠は減少してしまうそう。
そんな徐派睡眠と関連する研究があります。
サマリーをシェアします。
2021年 アメリカ ピッツバーグ大学のミッシェル・E・ステパン氏を筆頭著者とする、昼寝が睡眠不足解消にどれほど効果的かを調べた研究結果が発表されました。
研究には、275人の大学生が参加しました。
参加者達は夕方、大学の睡眠学習ラボに集合し、記憶力、注意力、集中力、思考力などを調べる認知課題を実施しました。
その後、帰宅して寝るチームと、一晩睡眠学習ラボに泊まって徹夜するチームとに無作為に分けられました。
翌日、徹夜チームの参加者は、昼寝をしないグループ、30分昼寝をするグループ、60分昼寝をするグループの3つに、無作為に振り分けられました。
最後に全員が、記憶力、注意力、集中力、思考力などを調べる認知課題を複数回行い、データを比較しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、徹夜明けに、30分または60分の短い昼寝をしたグループは、帰宅して十分な睡眠をとったグループと比べて、睡眠不足による認知課題でのミスが多くなりました。
2、30分または60分の短い昼寝では、睡眠不足による記憶力、注意力、集中力、思考力などについて、測定可能な回復効果が見られませんでした。
3、昼間の仮眠で徐派睡眠を多く獲得した人は、認知課題でミスが減少しました。
4、しかし彼らのパフォーマンスは少ししか改善されず、充分に睡眠を取った人のパフォーマンスには遠く及びませんでした。
5、それでも、徐派睡眠が10分増加するごとに、ミスが約4%減少しました。
6、この数字は小さく見えるかもしれませんが、外科医、警察官、トラック運転手など、睡眠不足による作業が引き起こしやすいミスの種類を考えると、4%のミスの減少は人命を左右する可能性すらあります。
7、今回の研究結果は、睡眠を優先することの重要性と、たとえ徐派睡眠を含む昼寝であっても完全な夜の睡眠に取って代わることはできないことを示しています。
出典:Sleep
https://academic.oup.com/sleep/advance-article-abstract/doi/10.1093/sleep/zsab152/6307588
なんと、睡眠不足によって仕事のパフォーマンスは低下しますが、それを短時間の昼寝で補おうとしてもさほど回復は見込めないそう。
よく、会社の昼休みに30分程度の昼寝をすると疲労回復に良いと言われますが、そんな説を覆すような研究結果です。
私自身とある睡眠不足の勤務日に、スマホでタイマーを30分にセットし、会社の書庫で昼寝に挑戦してみたことがあるのですが‥。
社内では気が張っているのでほとんど眠れず、結局私に短時間の昼寝は合いませんでした。
脳と体力を回復させるためには、もっと昼寝の時間を長くして、徐派睡眠が取れるようにする必要があるのかも。
そうは言っても、人命に関わるような仕事では、わずかな昼寝の効果でも有益とのことですから、昼寝が無駄というわけではないようです。
私自身、CA時代は変則勤務でしたので、常に時差ボケや睡眠不足と戦っていました。
次のフライトに備えて、起床時間、就寝時間、夕食時間、昼寝時間・・・と逆算して自分の計画を立てていくので、仲の良い友達とスケジュールを合わせるのが大変です。
そんな私の経験上、睡眠リズムや睡眠時間って人による個人差が大きく、何が合うかは自分で睡眠記録をつけるなどして調べるのが良さそう。
理想は毎晩の睡眠時間をしっかり確保することですが、これが今も難しくて反省です。
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