「行動心理学」(Psychology of behaviour)という心理学の分野があって、人間の行動、ちょっとした仕草のパターン、顔色、声のトーンなどから人の心理を研究します。
他人の思考、感情、願望、意図、精神状態などを読み取って解釈するスキルを、読心術(Mind Reading)と言います。
それは超能力などではなく、古くから人類が自然に使っていた心の機能です。
集団の中にこの能力の高い人がいると、社交性、協調性、チームワークを計り知れないほど向上させますのでとても貴重な人材と言えます。
しかし大抵の人は、読心術が苦手です。
実験によれば、他人が自分のことをどのくらい好意的か、どのくらい知的か、どのくらい魅力的かを評価するのが偶然以上に上手くいくことはほとんど無いそう。
読心術に長けている人は、他人の立場に立つのが簡単で、たとえ自分の視点と違っていても、他人の視点を理解することができるそう。
彼らは相手の言葉や行動の微妙な手がかりから、相手が何を考えているかを理解することができるのです。
それに対して読心術が苦手な人は、自分中心的な思い込みがあるのだそう。
それは、自分が他人からどのように見られているかを想像しようとすると、どうしても自分自身の見方に偏ってしまうことを意味しています。
つまり他人の心を読むには、まず自分の心を読まなければならないのですが、残念なことに、私たちは他人から見た自分を見ていないことが多いのです。
では、どうすればよいのでしょう?
研究のサマリーをシェアします。
2016年、アメリカ ペンシルベニア大学のジョーダン・ M・カーペンター氏を筆頭著者とする、読心術のモチベーションとスキルの関係を調べた研究結果が発表されました。
研究には大学生など290人が参加しました。
パソコンで動画を見て登場人物の気持ちを想像する実験や、目の画像だけを見てその人の感情状態を推測する実験などを複数回行いました。
また、他人へ共感したり、他者の目線で物事を考えたりする視点の取り方についての質問に回答してもらいました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、読心術の能力に関して、性別の違いによる有意差は認められませんでした。
2、読心術が上手にできる人とそうでない人の差は、他人の視点や精神状態に努力して関わろうとするモチベーションの個人差と言えます。
3、他人と関わろうとするモチベーションの高い人ほど、文学や物語の読書量が多い傾向にありました。
4、これに対して、ノンフィクションの読書量は多くありませんでした。
5、他人と関わろうとするモチベーションの高い人ほど、文学や物語に引き込まれ、没頭する度合いが高いことが示されました。
6、読心術のモチベーションが高い人は、読書でもそれ以外でも、他人の考えていることや感じていることを細やかに理解しようとすることを楽しんでおり、他人の心理描写がより豊かになる傾向がありました。
7、これには、チームワークや協調性の向上など、さまざまなメリットがあり、この資質が高いことは、あらゆる種類の社会的優位性につながるといえます。
出典:Springer Link
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11031-016-9544-z
読心術のスキルを高めるには、文学や小説を読むのが有効だそう。
確かに、目には見えない人の心の細やかさを想像力だけで理解するのが好きで、登場人物に感情移入するのが得意な人ほど、読心術にも長けているというのは納得ですね。
つまり、心理学の本を読んでテクニックや知識を得るばかりではダメということになりますので、私も小説を沢山楽しみます。
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