脳科学の研究で、一定の人々が生まれつき非常に繊細な脳を持っていることがわかっています。
彼らは「非常に感受性が強く敏感な気質をもった人」という意味の「HSP」(Highly Sensitive Person )と呼ばれ、次のような特性があると言われています。
①空気を読む能力が高く、情報を読み取りすぎて疲れやすい。
②感覚が敏感なため、環境から過剰な刺激を受けやすい。
③人の感情を汲み取り理解する共感力が高い。
④自分と他人の心の境界線が薄く、他人の影響を受けやすい。
⑤高感度のアンテナを張り微かな変化でも敏感に感じやすい。
⑥相手の意向を敏感に察して優先しやすく、自己否定が強い。
HSPは統計的には人口のおよそ2割があてはまる生物学的な気質であり、障害ではありません。
しかし裏を返せば、約8割の人はこの性質に当てはまらないため、HSPの特性は共感を得られにくいのです。
そのため、HSPはそうでない人達に合わせようと無理をして、生きづらさを感じやすいそう。
そんなHSPの脳の仕組みを調べた研究があります。
サマリーをシェアします。
2021年、アメリカ カリフォルニア大学サンタバーバラ校のビアンカ・P・アセヴェド博士を筆頭著者とする、HSPの脳内でどんな処理が行われているのか、また感受性がどう影響しているのかを調べた研究が発表されました。
研究者達は、大学の実験室に参加者を連れて行き、複数の表情の顔画像についてどう感じたかを回答する共感度の課題を実施しました。
その後、安静状態で参加者の脳内MRIスキャンを行いました。
また、参加者のHSPスコアを測定し、他のデータとの相関を調べました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、HSPスコアの高い参加者ほど次のような傾向がありました。
2、エピソード記憶の統合や自発的な記憶の取り出しに関係する回路である、楔前部と海馬の間の接続が強くなっていました。
3、その一方で、痛みや不安の調節に重要な部位である、扁桃体と橋室周囲灰白の間の接続は弱くなっていました。
4、さらに、感情やストレスの処理に重要と考えられる、島皮質と海馬の間でも接続が弱くなっていました。
5、HSPが過剰な刺激を受けて緊張や疲労が高まるのは、不安やストレスをコントロールする脳内の神経結合の弱さが原因と考えられます。
6、自分をHSPと思うかどうかにかかわらず、緊張感や疲労感を解消する方法のひとつは休息をとることです。
7、誰にとってもですが、特にHSP傾向の高い人にとっては、数分間の休憩をとり、何もしないでリラックスすることが効果的であることが、行動レベルと脳内レベルの両方で確認できました。
8、HSPには、感情を爆発させたり、先延ばしにしたり、引きこもったりする傾向があります。
9、しかし、物事をより深く処理し、美をより高く評価し、より良心的で、より高いレベルの創造性を持ち、人との絆が深いという特徴もあるのです。
出典:Neuropsychobiology
https://www.karger.com/Article/Abstract/513527
研究によれば、HSPは物覚えが良く、痛みや不安を紛らわせにくく、感情やストレスを忘れにくいそう。
つまり、良くも悪くも刺激に対する反応が良いということになります。
彼らは不快な状況では人一倍動揺するかもしれませんが、その一方では創造性が高く、人との絆が深く、美意識も高いそう。
コロナ禍により、経済問題や社会不安が重なって暗いニュースが連日報道されるようになりました。
このような不安な状態が続くことで、HSP傾向の高い人達はネガティブな影響を強く受け、普段以上に疲れやすくなっていることでしょう。
感染の心配をせずに日常を楽しめる時期が来るまでは、どうか無理せず休養を取ってくださいね。
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