心理学で「カクテルパーティー効果」(Cocktail party effect)と呼ばれる用語があります。
大勢の人がそれぞれに雑談しているカクテルパーティーのような状況でも、お互い会話をしている相手の声だけを選別して聞き取ることができる能力のことを指します。
それだけでなく、意識して聞こうとしていなかったざわつきの中にも、興味のある単語や、自分の名前が出てくると、それらが急に聞こえてくることも知られています。
雑踏の中で会話するという,これまで当たり前にしてきたことは、実は聴覚系の凄い能力に支えられていたのです。
そんなカクテルパーティー効果に関する研究のサマリーをシェアします。
2001年、アメリカ イリノイ大学のアンドリュー・R・A・コンウェイ博士を筆頭著者とする、カクテルパーティー効果と集中力の関係を調べた研究結果が発表されました。
研究には、イリノイ大学の学部生40名(男性17名、女性23名)が参加しました。
参加者を、集中力の高いグループと低いグループに分けて、カクテルパーティー効果の実験をしました。
全ての参加者に関連性の無い同一のメッセージを聴いてもらいましたが、その音源には参加者の個人名が出てくるようになっていました。
参加者がメッセージを聴いているパソコン画面には、数学の演算と、それとは無関係な単語が次々に表示されました。
参加者はそれぞれの画面の数式を声に出して読み上げ、その数式が正しいかどうかをYes/Noで回答し、さらに表示されている単語を読み上げるよう指示されました。
その後、無関係なメッセージ音源の中に、自分の名前が入っていたかどうかを尋ねられました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、集中力の高い参加者の20%、集中力の低い参加者の65%が、無関係なメッセージの中に自分の名前を聴いたと報告しました。
2、集中力の低い参加者の方が、自分の名前により頻繁に気がついていましたが、これは彼らがより多くの注意力を働かせた結果ではないことが確認されました。
3、無関係な音源の中に自分の名前が出てくることに気がついた参加者は、読み上げ課題で間違える可能性が非常に高くなりました。
4、彼らは集中力が低い事を示し、気が散る用な情報を遮断したり、抑制したりするのが困難でした。
5、高い集中力を持つ参加者ほど、メッセージ音源に自分の名前が出てくることに気がつかなかったと回答し、読み上げ課題の間違いが少なくなりました。
6、彼らは、無関係なメッセージからの情報を遮断する能力が高いため、自分の名前を聴きとる可能性が低く、そのため読み上げ課題の間違いが少なかったと考えられます。
出典:Psychonomic Bulletin & Review
なんと、他の作業をしながらメッセージ音源の中の自分の名前に気づけた人は、極端に気が散るタイプである可能性が高いとのこと。
私たちは他のすべての会話よりも興味がある一つの会話に同調することが非常に得意ですが、脳がひとたび「興味がない」と判断すると、その情報を受け取らなくなってしまいます。
私たちの聴力が持つカクテルパーティー効果が裏目にでると、嫌いだから、難しいから、必要ないから、などのネガティブな先入観で、脳が無意識に情報を遮断してしまうのですから、これは人として恥ずかしいこと。
悪口で「あの人は人の話を聞かない」と言うものがありますが、私は昔から一つの事に集中すると周りが見えなくなるタイプなので本当に耳が痛いです。
どんなに良い話や大事な話をされても、脳が「聴きたくない」と思うと全然内容が入ってこないわけですから、気をつけたいものです。
親子関係でも、言った言わないでトラブルになることがありますが、考えさせられますね。
親が一生懸命に話をしていても、その内容を子どもの脳が完全に遮断していたら、悲しい事に時間の無駄になってしまいます。
子どもに大事な事を伝えたいなら、いかに子どもの興味を惹けるかどうかにかかっていると言う事になりますから、工夫しなくては。
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