心理学の研究では、物を所有するより経験する方が、幸福度が長続きすると考えられています。
一口に経験と言っても、旅行、グルメ、エンタメなど色々ある中で、一体どれが最も効果的なのでしょう?
それについて調査した研究があるのです。
サマリーをシェアします。
2020年、アメリカ マイアミ大学のアーロン・S・ヘラー博士を筆頭著者とする、移動の新規性と多様性が幸福感を高めていることと、その時の脳の機能を調べた研究結果が発表されました。
研究には、ニューヨークとマイアミに住む132人が参加しました。
3カ月間、参加者の移動経路を GPSで追跡し、幸福度のアンケートに回答してもらいました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、移動距離が長い人ほど、より高い幸福を感じている傾向がありました。
2、また、通勤や通学などの固定されたルートの移動を繰り返している人よりも、目的地が様々で馴染みのない移動が多い人ほど、幸福感が高まっていました。
3、参加者の中で、特に移動距離が長く行き先がバラバラで幸福度の高い人の脳をスキャンしたところ、記憶を司る海馬と、快楽を司る線条体の活動に、強い連携が見られました。
4、これは、脳が移動の内容を過去の記憶と照合し、その移動が未経験だったり、多様性に富んでいたりする場合に、報酬として脳に快楽を与えていることを意味します。
5、これらの結果は、生活環境を多様にすることが幸福度を高めることを示しています。
出典:Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-020-0636-4
なんと人は日常生活の中で、慣れ親しんでいないルートでの移動や初体験の場所への移動などの、より多くの移動パターンを持っている時、幸福度が高まるそう。
研究者たちによれば、人間の脳が新規の移動を快楽と感じるのは、大昔に人類が狩猟採取生活をしていた頃の名残りかもしれないとのこと。
帰宅する際、真っ直ぐ戻らず途中で寄り道したり、いつもと違う道を通って買い物をしたりといった比較的小さな移動ルートの変化であっても幸福感が高まるのは、このような脳の仕組みが理由なのだそう。
そういえば、子どもって道草が大好きだし、私自身も学生時代は回り道が日課でした。
以前から、知らない道を気の向くままにフラフラ歩いたり、目的を定めない行き当たりばったりの旅に出たりするのって、妙にウキウキすると思っていましたが、実は脳の仕組みに叶っていたとは驚きです。
新しい移動で幸福度が高まると、人々はよりアクティブに未知の体験を求めて移動するようになるため、ますます幸福度が高まってゆくとのこと。
幸福度を高めるための様々な商品が世に出回っていますが、移動が幸せの鍵だったとは意外です。
思えば子どもが小さかった頃、とりとめのない話をしながらのぶらぶら歩きを、もっと沢山楽しんでおけば良かったです。
これからは、出かける際にふらっと気ままな寄り道をすることを、時間の浪費ではなく幸福度アップの投資ということにして、罪悪感無しに楽しもうと思います。
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