人間はもともと自然環境の中で暮らしていた生き物だったので、現代の便利だけれど人工的な都市生活は、それだけでストレスの要因になっているのかもしれません。
実際、都会のビルの谷間を歩いていて、途中に公園の緑があるとホッと気持ちが和みます。
とはいえ、公園を横切るだけではたった数十秒にしかなりませんし、忙しい平日に田舎まで森林浴に行けるわけもありませんから、緑の癒し効果ってわかりにくいもの。
アメリカでは昨今、メンタルヘルスに問題を抱える大学生の割合が増加傾向にあり、自然豊かな環境による心身へのポジティブな効果について、関心が高まっているそう。
では、人は一体どれだけの時間、自然と触れ合えば癒されるのでしょう?
これまでの論文を分析し、それを突き止めた研究があります。
サマリーをシェアします。
2020年、アメリカ コーネル大学のジェネヴィヴ・R・メレディス博士を筆頭著者とする、大学生のメンタルヘルスに良い影響を及ぼすために、自然の中でどのくらいの時間、何をして過ごせば良いかを調べた研究結果が発表されました。
研究者達は、2000年以降に実施・発表された、自然に触れる効能について大学生を対象に調査した、14本の研究論文を調べました。
論文の10本は日本、3本はアメリカ、1本はスウェーデンのものでした。
全ての研究で、合計706人が実験に参加しました。
研究では、参加者に自然の中で過ごしてもらい、心拍数、血圧、唾液中のコルチゾール濃度などの生理的なモニタリングテストを行なって身体の変化を調べました。
また、心理テストを行ない、自然の中で過ごす時間の経過と、参加者の感情、気分、意志に関する心の変化を調べました。
これらのデータを精査した結果、次のようなことが分かりました。
1、自然の中で過ごす数十分の時間が、大学年齢の成人の心身の健康に有益な効果をもたらしていましたが、都市化された環境で同じ時間を屋外で過ごしても同じ効果は得られませんでした。
2、自然に囲まれた空間で過ごすことで、身体的なストレスレベル、血圧、心拍数に改善効果が認められました。
3、心理テストでは、怒り・敵意・混乱・困惑、抑うつ・拒絶・疲労・惰性・緊張・不安のスコアが低下し、活力・快適感・癒された感じ・前向きさのスコアが上昇しました。
4、その上自己申告でも、穏やかさ、心地よさ、すがすがしさが高まったとの回答が得られました。
5、自然に囲まれた空間でたった10分過ごすだけでも、心身ともに良い効果が認められましたが、もう少し時間を延ばすと、より効果が高まりました。
6、自然の中で50分ほど過ごした時、集中力、気分、血圧、心拍数が最も改善されました。
7、50分を過ぎたからといって、効果が低下することはありませんでしたが、生理的な効果や自己申告による心理的な効果の伸び率は、50分を過ぎるとさほど伸びない傾向にありました。
8、また、これらの良い効果は、自然の中で座っていても、歩いていても得ることができました。
出典:Frontiers in Psychology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2019.02942/full
たった10分間、自然豊かな空間で過ごすだけでも、集中力、気分、血圧、心拍数に良い効果があったとは驚きました。
自然に親しむことが心身コンディションに良い効果を及ぼすとは、誰もが薄々わかっていたことですけれど、こうして研究データで示されると、改めて納得です。
そういえば、ベートーベン、ダーウィン、フロイト、アインシュタイン、スティーブ・ジョブズなど、偉人に散歩好きが多いのは有名ですね。
おそらく偉人達は自然に親しむことの効果を体感していたのでしょう。
小さい子供たちも自然の中で遊ぶのが大好きですが、心の発達にも、身体の成長にも大切なひと時と言えそう。
大人も子ども達を見習って、たまには忙しい日常から離れて自然を愛でたいものです。
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