「歴史心理学」(historical psychology)という学問分野があって、人間の心理のあり方を、歴史的な観点から探究します。
研究により、歴史上の戦争や内戦が起きるたびに人々の幸福度が変動することが分かりました。
突然人類に降りかかったコロナ禍で私たちの生活が変わり、不自由を感じる機会も増えましたが、この研究がコロナ禍を生きる私たちの役に立つかもしれません。
サマリーをシェアします。
2019年、イギリス ウォーリック大学のトーマス・T・ヒルズ教授を筆頭著者とする、欧米の人々の幸福度の変動を、過去200年にわたり遡って調べた研究結果が発表されました。
研究者達は、Googleブックスを活用し、1776年(アメリカ独立宣言)以降出版された800万冊の文書(新聞、雑誌、書籍)をもとに、心理学の基準に基づく感情分析を用いて幸福度を推定しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、過去200年間でアメリカ国民が最も不幸だった時期は、ベトナム戦争があった1970年代前半でした。
2、過去200年間でイギリス国民が最も不幸だった時期は、「不満の冬」などと呼ばれ、ストライキ、厳しい寒波、経済の悪化などに悩まされた、1978年から1979年にかけてでした。
3、過去200年間でイタリア国民が最も不幸だった時期は1922年から1943年にかけてのファシズムの時代と、近年では金融危機の後でした。
4、国民所得の増加は人々を少しだけ幸せにしましたが、一時的な好景気や不景気は、長期的な幸福度への影響がほとんどありませんでした。
5、今回のデータでは、1848年からヨーロッパ各地で起こりウィーン体制の崩壊を招いた48年革命、1861年にアメリカ連合国間で始まった南北戦争、1920年代に自動車、映画、ラジオおよび化学産業が急成長した狂騒の20年代、1929年から世界中の資本主義諸国を襲った世界大恐慌などが人々の幸福度に影響を及ぼしましたが、これらの出来事が終わるとすぐその影響は無くなり、幸福度は元に戻っていました。
6、戦争などの辛い出来事があっても、国民の幸福度はすぐに立ち直り、人々は自分が生きてきた時代の余韻や悲劇をすぐに忘れてしまったことは、驚くべき結果といえます。
出典:Nature
https://www.nature.com/articles/s41562-019-0750-z
ビッグデータを活用した、気の遠くなるような研究ですね。
研究によれば、内紛や戦争によって一時的に幸福感が下がったとしても、その要因が無くなれば、人々の幸福度は回復していたとのこと。
現在、私たちが直面しているコロナ禍は、感染が世界中に広がり多くの命を奪ったため、この災害を戦争に例える人もいます。
もちろん人間が引き起こす戦争とは違いますが、これだけ世界中で多くの人が犠牲になると、戦争と同じように人々の幸福度に影響を与えていそう。
例えば、コロナ禍で楽しみにしていた行事が中止になり、がっかりしている子どもの姿を見ると、二度と来ない貴重な青春時代の幸福度が下がってしまった気がして胸が痛みます。
親としてできることの一つが、この感染症が収まったら世界はどう変わっていく可能性があるのかを歴史から学ぶことかもしれません。
歴史的に見れば、人の心は思うよりずっと柔軟で回復力が高いそうですが、若い世代なら尚更でしょう。
コロナ禍で不自由な生活を強いられて行動が制限された分、感染終息後は自由に行き来して色んな体験を楽しむ時代が来て欲しいですね。
それがはっきり分かるのは子ども達が成長した後かもしれませんが、コロナ禍の辛さを忘れてしまうほどの明るい未来が来るとの前提で、毎日を前向きに過ごしたいものです。
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