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悲しい音楽で気分がアガる理由

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心理学の用語で「カタルシス効果」(catharsis effect)と呼ばれるものがあります。

 

心の中に溜まっていたネガティブな感情を自分の言葉で表現したり、誰かに代弁してもらったりすることで、苦痛が緩和され、気持ちが晴れる心理効果のことです。

 

例えば、親しい友人に悩みを打ち明けて、辛い気持ちを分かってもらえて気分がスッキリするのは、カタルシス効果によるものと考えられています。

 

とはいえ落ち込むたびに愚痴をこぼせる相手が、いつも傍らにいるとは限りません。

 

そんな時、悲しい曲を聴いてその世界観に浸ると、なんだか癒されるもの。

 

でも、悲しい気分のときに、悲しい曲を聴いて気分が良くなるとは、一体どういうことでしょう?

 

研究によれば、涙を誘う「泣ける曲」にもカタルシス効果を伴う場合があるそうです。

 

サマリーをシェアします。

 

 

2017年、日本の国立研究開発法人情報通信研究機構の森数馬研究員を筆頭著者とする、音楽を聴いている時の感情の高ぶりについて調査した研究結果が発表されました。

 

研究には大学生66名が参加しました。

 

参加者に好きな音楽と、それを聴いて感情が高まった時の気分を尋ね、「楽しい音楽で鳥肌が立つグループ」32名(男性14名、女性18名、平均年齢18.84歳)と、「悲しい音楽で涙腺が緩むグループ」34名(男性13名、女性21名、平均年齢18.79歳)とに分けました。

 

参加者に心拍数、呼吸、毛細血管の状態を記録するための機器をつけた状態で、自分の好きな音楽を聴きながら、感情が高まるタイミングでスイッチを押し、自己申告してもらいました。

 

結果、次のようなことがわかりました。

 

1、楽しい音楽を聴いて鳥肌が立つとき、脳からドーパミンという神経伝達物質が放出されて、やる気や幸福感が高まりました。

 

2、悲しい音楽を聴いて涙腺が緩むとき、参加者は曲の中の登場人物に感情移入していました。

 

3、そして、歌手があたかも自分の過去の経験を知っているように感じ、自分を理解されたような喜びを感じていました。

 

4、涙にはカタルシス効果があると考えられるため、鳥肌が立つときと涙腺が緩むときでは心理的な反応が異なります。

 

4、悲しい歌を聴いて胸がいっぱいになり涙が出る時、カタルシス効果が重要な役割を果たしていると考えられます。

 

5、音楽は形のないものだからこそ、自分の人生を反映させやすいのかもしれません。

 

出典:Scientific Reports

 

https://www.nature.com/articles/srep46063

 

 

なるほど。

 

スマホなどで音楽を日常的に携帯して楽しんでいる、イマドキの大学生の様子が目に浮かびます。

 

明るく楽しい「応援ソング」を聴いて人が元気になるのは、わかりやすいです。

 

しかし、暗くて辛い「失恋ソング」を聴いてなぜ人は悲しくならず、むしろ気分が良くなるのか?

 

研究によれば悲しい歌が自分の体験や感情を代弁してくれているかのように感じて涙が出るときは、カタルシス効果により感情の浄化が起きているとのこと。

 

音楽のようなアートの世界を科学的に研究するのって、ちょっと興ざめな気もしていたのですが、改めて音楽の持つパワーを知りました。

 

大人のくせに泣いたりしちゃダメだと思い込みがちですが、音楽などの芸術に触れて感動し、心が解放されて涙が出てくるのは貴重な体験なのですね。

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