通勤途中に周囲を見渡すと、ほとんどの人がスマートフォンを手にしています。
今や、ちょっとした隙間時間や休憩時間にスマートフォンを使ってリフレッシュするのは、当たり前の光景です。
ところが、脳の疲労回復のためにスマートフォンを使っても効果がないことが、研究で明らかになりました。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ ラトガース・ビジネス・スクールの、サンフン・フニー・カン氏と、テリー・R・カーツバーグ准教授による、スマートフォンが認知能力に及ぼす悪影響を調べた研究結果が発表されました。
研究には、414名(男性56%、女性44%、平均年齢22歳)の大学生が参加しました。
参加者を無作為に4つのグループに振り分け、全員に難解な言葉のパズル問題を解いてもらいました。
問題を半分ほど終えたところで休憩時間を設けましたが、以下のように休憩時間の過ごし方に指示を出しました。
Aグループ:スマートフォンを触って休憩する
Bグループ:コンピューター機器を使って休憩する
Cグループ:紙に印刷された文字を読んで休憩する
Dグループ:休憩時間中も休憩なしで作業を続ける
休憩時間終了後、残り半分の問題を解いてもらい、グループごとにかかった時間と正答率を分析しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、コンピューター機器を使って休憩したBグループと、紙に印刷された文字を読んで休憩したCグループの、作業完了にかかった時間と正答率は、ほぼ同じでした。
2、それらと比べて、スマートフォンを使って休憩したAグループは、作業完了にかかった時間が19%長く、正答率は22%低くなりました。
3、スマートフォンを使って休憩したAグループと、休憩中にも休まず作業を続けたDグループの、作業完了にかかった時間と正答率は、ほぼ同じでした。
4、これは、紙媒体やコンピューターを使った休憩で起こった認知的な充電が、スマートフォンでは起こらなかったことを示唆しています。
5、この結果は、その後の作業に必要な認知能力の回復を目的とするならば、スマートフォンを持たずに休憩した方が良いかもしれないことを示しています。
出典:Journal of Behavioral Addictions
https://akjournals.com/view/journals/2006/8/3/article-p395.xml
なんと、休憩中にスマートフォンを使うと、脳疲労を回復させることができず、休憩を取らなかったのと同じくらいに休憩後のパフォーマンスを下げてしまうそうです。
ネット環境が良くないということであれば、パソコンやタブレットなど、他のスクリーンメディアでも同じような結果になりそうなものです。
ところが、スマートフォンよりも画面の大きいコンピューターには、脳の疲労と認知機能を回復させる効果があったのですから意外です。
私たちの脳は、スマートフォンが視界に入るだけで、SNSや知人からの着信があるのでないかと考えて気が散ってしまい、認知的にも感情的にも「迷う」ことが多くなるそうです。
私自身、スマートフォンでSNSをチェックしている時って、細かな文字で書かれた文書を読みながらも、アラート通知も見逃さないよう注意力を使っています。
これでは、リラックスしているというより、休憩時間を利用して別のお仕事をしているようなものですね。
中高生のスマートフォン依存が話題になることがありますが、スマートフォンで休憩すればするほど集中力を奪われ、精神的なエネルギーを消耗しているとするならば、勉強どころではなくなるのもうなずけます。
スマートフォンとの上手な付き合い方について、今後の研究にも注目したいです。
↓いいね を押していただけますと励みになります。