嘘をつくのは良くないことだって、誰でも分かっていることです。
ですが、自分をより正直に見せるために、あえて本当のことを隠して嘘をつきたくなる場面があります。
心理学的にはどう説明するのでしょう?
サマリーをシェアします。
2020年、イスラエル ヘブライ大学のショハム・チョーシェン・ヒレル博士を筆頭著者とする、正直に見せたいという人間の欲求が、多くの嘘を招いていることを調べた研究が発表されました。
研究の一つには、イスラエルの司法試験に合格した、26歳から66歳の弁護士150人が参加しました。
彼らに、クライアントから仕事を依頼され、それについて60時間〜90時間の労働時間に相当する報酬が支払われることになったと仮定してもらいました。
その上で、実際の労働時間が90時間だった場合と60時間だった場合、クライアントへの請求書に労働時間をどのように記載するかを回答してもらいました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、90時間働いたと仮定されたグループは、請求書に記載した労働時間を、平均88時間に減らして請求しました。
2、60時間働いたと仮定されたグループは、請求書に記載した労働時間を、平均62.5時間に膨らませて請求しました。
3、労働時間を実際よりも減らして請求したグループは、嘘をつくと自分が損をするような状況であっても、正直に思われたいという欲が、実際の通りに正直でありたいという気持ちに勝ったと考えられます。
4、今回の結果から、人は極めて有利な結果を得ると、他人の疑惑の反応を予測することがわかりました。
5、そして、真実を話して自分勝手な嘘つきと思われるよりも、嘘をついて正直者と思われる方を好むことが示唆されました。"
出典:Journal of Experimental Psychology
https://www.apa.org/pubs/journals/releases/xge-xge0000737.pdf
なるほど、そういうことって身近にありますね。
信じてもらえなさそうな都合の良い偶然が起こった時、それを正直に話したらどうなるでしょう?
「それは話ができすぎている!嘘をついているのでは?」と疑われるくらいなら、損をしてでも常識的な範囲内に操作しておこうとするのはあり得る話です。
ここだけの話ですが、私自身、会社の残業時間を正直に自己申告するのは気が引けて、毎回ドキドキしていますから。
勤怠管理システムの打刻以外に証拠がないため、上司から「過大に申告したのでは?」と、疑われることを恐れてしまうんですよね。
相手を騙したり陥れたりするのが目的の悪質な嘘と違って、このような自分の評判を落としたくないための軽微な嘘は、最も一般的な嘘のタイプとされています。
とはいえ、会社で労務管理のお仕事をしていると、いわゆるサービス残業をしている人を探し出して警告するという、気の滅入る仕事もあります。
管理側の立場で「ちゃんと正直に申告してください」って言っても、あまり効果がない理由がわかりました。
警告よりも、「私だって、緊張するけどちゃんと申告してるんですよ。」って本音を伝えて、安心させるのが先でしたね。
そんな自分を振り返って、子どもにもルールを押しつけるだけでは不足だったんだな。と反省しました。
以前子どもが、友達とのイベントでかかった費用を少なめに申告してきたことがあったのですが、親に水増し請求を疑われたくなかったのでしょう。
「正直に報告しても疑ったりしないよ。信頼してるからね。」って子どもに伝えてみます。
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