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頑張りすぎが脳に与えるダメージ

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オリンピックに出場するようなトップアスリートが、怪我や故障がないにもかかわらず、精神的な疲労を理由に突如休養や引退を宣言して話題になることがあります。

 

それはもしかすると、オーバートレーニング症候群によるものなのかもしれません。

 

オーバートレーニング症候群とは燃え尽き症候群の一種で、強い疲労感を伴う原因不明のパフォーマンス低下を引き起こします。

 

なかには、無気力、イライラ、落ち着きのなさ、不眠、食欲不振など、うつ病と共通する症状を伴うケースもあるそうです。

 

研究のサマリーをシェアします。

 

2019年、イギリス ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのバスティアン・ブレイン教授と、フランス 脳・脊髄研究院のマティアス・ペシグリオーネ研究員を筆頭著者とする、過剰なトレーニングが脳に与える影響を調べた研究結果が発表されました。

 

研究には、十分なトレーニングを積んだ37人の男性アスリート(平均年齢35才)が参加しました。

 

研究のためにオーバートレーニング症候群を誘発することは倫理上の問題があるため、研究者たちは参加者に一時的に強い負荷をかけ、オーバートレーニング症候群に至る前段階の状態を作り出して研究を行いました。

 

まず、参加者を年齢とパフォーマンスレベルが一致するように、無作為に2つのグループに分けました。

 

一方のグループは通常のトレーニングを行い、もう一方のグループは、一時的にトレーニングレベルを40%増加させました。

 

その後、全員に対して、身体能力テスト、脳のMRIスキャン、行動選択テストを行い、両グループのデータを比較しました。

 

結果、次のようなことがわかりました。

 

1、負荷をかけすぎた方のアスリートは、より多く疲労を感じていました。

 

2、負荷をかけすぎた方のアスリートの脳をMRIスキャンすると、外側前頭前野の活性が低下していました。

 

3、外側前頭前野とは、ヒトの大脳の前頭前野と呼ばれる場所の外側の領域のことで、ヒトの判断力、記憶力、思考力に関わっており、自制心の鍵を握るとされている領域です。

 

4、実際に、負荷をかけすぎた方のアスリートは自制心が弱くなり、思考力が低下し、意思決定が困難になり、衝動的な行動をとりがちになっていました。

 

5、過度の肉体的トレーニングが、脳の疲労を誘発し、脳の活動を低下させることがわかりました。

 

出典:Current Biology

 

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31104-2?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982219311042%3Fshowall%3Dtrue

 

オーバートレーニング症候群のメカニズムはまだ明らかになっていないそうですが、脳の疲労が関わっている可能性がありそうです。

 

身体への負荷のかけ過ぎで脳の疲れが蓄積し、心のエネルギーが枯渇してしまうと、或る日突然熱意や意欲を失ってしまうとは恐ろしい。

 

競争の激しいアスリートの世界であっても、頑張りすぎない配慮が必要ですね。

 

でもそれは、仕事と家事と育児に追われる親にとっても同じだと思います。

 

毎日時間に追われ、頑張りすぎるのが当たり前になっているのは危険かも。

 

自分では気づかないうちに、身体への負荷のかけ過ぎで脳が疲れているかもしれませんので、たまには自分を振り返ってみたいもの。

 

普段ならスルーできる家族の言動にイラっとしたり、

 

家事が溜まっているのにやる気が起こらなかったり、

 

理由なく心がざわざわと落ち着かず集中できなかったり、

 

そんな自分に気付いたら、早めに休息の時間を確保したいものです。

 

万が一、親としての役割を担えなくなってしまっては大変ですから、心身のセルフケアも親の役目の一つと考えていいのかもしれません。

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