今やインターネットによるオンライン世界との常時接続は当たり前となっています。
研究によれば、ネット上の仮想世界は、あまりにも私たちの現実世界に類似しているため、長時間のネットへの接続が記憶力、注意力、集中力を変化させているとのこと。
研究のサマリーをシェアします。
2019年、イギリス、マンチェスター大学のジョセフ・ファース博士を筆頭著者とする、インターネットが人の頭脳に及ぼす影響を多方面から調査した国際研究の結果が発表されました。
その内容は、次のようなことでした。
1、ある研究チームが参加者に、特定の情報を検索するよう指示したところ、インターネットを使った人の方が、印刷された百科事典を使った人よりも、素早く情報収集ができていました。
2、しかし、インターネットを使って情報検索をした人たちは、検索した内容を後から正確に思い出せませんでした。彼らは内容そのものでなく、その内容がどこで検索できるかを覚えていたのです。
3、これは、オンライン世界が、人間の脳の「外部記憶」として機能していることを示しています。
4、他の研究チームは、インターネットに精通した高齢者(55〜76歳)がネット検索をした場合、紙に書かれた文章を読む時よりも多く、脳が活性化していることを明らかにしました。
5、また、オンライン上のコンピューターゲームは、加齢に伴う認知機能の低下を抑制することも分かりました。
6、別の研究チームが、頻繁なデジタル・マルチタスク行動は、複数の情報を同時に脳が処理できるよう、注意力を分散させていることを明らかにしました。
7、その一方、長期間のデジタル・マルチタスク行動で、集中力が低下することも分かりました。
出典:World Psychiatry
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/wps.20617
つまり、オンライン上でマルチタスクに対応できるよう、私たちは注意力を分散させるようになったのです。
それと同時に、脳の記憶力、集中力が低下しているという点は、認めざるを得ません。
実際、スマホに友人の誕生日や電話番号を登録し、自分で覚えなくて済むようになった途端、すぐ忘れました。
また、ネットで情報を検索している最中に、SNSの通知が来ると気が散ってしまいます。
特に子ども達の場合、スマホにより勉強に集中できなくなるなど、その弊害が問題視されていますね。
ところが高齢者の場合は、逆にインターネットが脳への良い刺激になっているとのこと。
確かに老眼で小さい文字が見にくくなると、新聞よりネットニュースの方が読みやすいでしょう。
高齢になっても、ウェブベースの「外部記憶」やその他の便利な機能を活用し、若い頃の能力を発揮したり、あるいは超えたりすることも可能とは、希望の持てる話です。
インターネットの影響と言っても、弊害ばかりでなかったのは驚きです。
しかし、インターネットが一般に公開されてからまだ20年程度のため、この変化が人類の頭脳に長期的にどのような影響を及ぼすかについては研究途上とのこと。
インターネットに限らず、見ている立場の違いによって、一つの物事に対する評価が変わってくることがありますね。
ますます進化し続けるテクノロジーを上手に使いこなして、能力を高めてゆけるのか?
それとも、便利だからと頼ってしまい、脳を怠けさせてしまうのか?
インターネットが問題ではなく、本人次第ということになります。
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