子ども時代の深刻なトラウマが原因で、大人になっても苦しむ人がいます。
これまでに行われた数多くの研究により、子供時代にトラウマを経験した人は、太りやすく、喫煙しやすく、うつ病になるリスクが高くなるといわれています。
しかしある研究によれば、子どもの頃にこのような辛い経験をしても、それをカバーするだけの楽しい経験をした子供は、心の痛手から回復し、成人後の健康状態を良好に保つことができていたそうです。
サマリーをシェアします。
2018年、アメリカ、ブリガム・ヤング大学のアリ・クランドール博士らを中心とした、子ども時代の辛い経験と楽しい経験が、成人後の身体的・精神的健康に及ぼす影響についての研究結果が発表されました。
研究では、19歳から57歳までの246人を対象にオンライン調査を行い、子ども時代の辛い経験と楽しい経験について回答してもらいました。
辛い経験とは、虐待、育児放棄、家族との死別、家族の刑務所入り、家族の依存症、両親の離婚などです。
楽しい経験とは、良い友人との関わり、楽しめるイベント、世話をしてもらえる安心感、家庭内での決められた日課、規則正しい食事の時間、親戚・隣人・教師・青年指導者など親以外の優しい大人との関わりなどです。
そして、それらが成人後の身体的・精神的健康にどのように影響しているのかを検討しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、およそ75%の人が、子ども時代に少なくとも1つの辛い経験があったと報告していて、その平均はおおよそ3つでした。
2、一方、楽しい経験の平均はおおよそ8つで、これらは全て、幼少期の辛い経験が及ぼす悪影響を軽減させていました。
3、子ども時代の楽しい経験を増やすことは、生涯にわたる健康状態の改善を促進する可能性があることが示されました。
出典:Child Abuse & Neglect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0145213419302662?via%3Dihub
子ども時代の辛い経験が長期にわたって悪影響を及ぼすと言われたら、親は誰でも心配になってしまいます。
ところが、子ども時代に辛い経験をしたとしても、それを上書きできるほどの楽しい経験や、良い人との出会いがあれば、深い心の傷を癒し立ち直ることができるとのこと。
子供時代、どんな辛い出来事に直面していたとしても、楽しい経験が多ければ多いほど、悪影響を中和し、大人になってからの心身の健康を保っていたのです。
人間の心って、困難や逆境でダメージを負っても、自分を適応させ、生き延びようとする柔軟性を持っているようです。
子供時代の辛い体験は良くないものですが、傷付いた分以上の楽しい経験を積むことで、辛い経験を打ち消す役に立つのです。
それを逆に考えると、子ども時代の楽しい経験が少ないことって、とても深刻な問題ということになります。
なぜならば子供時代の楽しい経験は、子ども時代だけでなく、生涯にわたって良い影響を及ぼす可能性があるから。
ならば親として、子どもの楽しい経験を増やすことをもっと考えたいものです。
子どもは楽しいこと、遊ぶことが大好きですが、それはある意味、理にかなった事なのかもしれません。
子どもに「遊んでばっかりいないで勉強しなさい」なんて、言いにくくなりますね。
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