コロナ禍で、私たちの日常生活における手洗いが習慣化しています。
そんな手洗いには、感染防止以外にも気分転換効果があることが研究で分かっています。
サマリーをシェアします。
2017年、カナダ トロント大学のピン・ドン氏とスパイク・W・S・リー氏を筆頭著者とする、手洗いが及ぼす心理的影響について調べた研究結果が発表されました。
研究には、103名の大学生(男性41名、女性59名、その他3名)が参加しました。
まず参加者に、このセッションでは言語能力を評価するとの、表向きの目標が告げられました。
そして、参加者の意識を表向きの目標に惹きつけるために、言語能力を試す文章課題に取り組んでもらいました。
次に、商品評価調査として、参加者全員に消毒用のウェットティシュが配られました。
半分の学生には、実際に使用してもらい、使用感を評価してもらいました。
もう半分の学生には、商品のパッケージやデザインを評価してもらいました。
その後、全員に単語完成課題に取り組んでもらいました。
結果、次のことがわかりました。
1、人は手を拭くと、当初の目標設定を心に留めておく効果が弱まりました。
2、手を拭いたグループは、そうでないグループと比較して、目的に向かう行動力、判断力が低下しました。
3、身体を清潔にすることは、心をきれいにすることにもつながるようです。
4、今回の研究では、浄化が目標達成に及ぼす短期的な効果を検証したに過ぎないため、目標を達成しようとする人々が、個人の衛生習慣を大幅に変えるべきだと示唆するのは時期尚早かもしれません。
5、しかし、手洗いが、古く実りのない思考からより良く新しい思考へと柔軟にシフトするための、実用的な方法になる可能性がありえます。
出典:Journal of Experimental Psychology
https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0000285
何と手洗いには、それまでの古い思考や目標を手放す効果があるそう。
手洗いがこんなにお手軽な気分転換方法だったとはびっくりですが、確かに勤務中、会社のトイレで手を洗って席に戻ると妙にリフレッシュしているものです。
研究によれば、手洗いをして自分を清浄に保つ行為は、良くも悪くも脳内のリセットにつながるそう。
例えば、親としてどうしても理解して欲しいことがあり、子どもを叱ったりすることもあります。
その後、叱責され落ち込んでいた子どもがその手をウェットティシュで拭いたら、反省モードが速やかに終了し、叱責効果が半減してしまうおそれも‥。
子ども自身の罪悪感や自責の念が消えて気分がサッパリと軽くなりそうですが、同時に今後は行動を改めなくてはという目的意識も、汚れや雑菌とともにぬぐい去られてしまうということ。
自分の手を清潔にすることで、ネガティブなイベントに対して精神的な区切りがついてしまい、これからはもっと頑張ろうと設定したはずの意欲も衰えてしまうのは困りもの。
子どもを叱って終わりではなく、ちゃんと課題と向き合う時間も設定したいですね。
逆に、仕事で煮詰まってしまい頭がぼーっとする時や、理不尽な経験をして気持ちが苛立っている時などは、さっさと手を洗ってネガティブな思考を浄化するのが良さそう。
手洗いの効能を意識し、脳のリセット効果を上手に使いこなしたいものです。
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