女性の方が男性よりも長生きする傾向がありますが、このことは生物科学的に見ても確かなことと言えます。
実際、高齢の女性は、記憶力、推理力、問題解決力などのテストで、高齢の男性よりも良いスコアを出す場合が多いため、女性の脳は男性に比べて若々しいのではないかとの仮説が立てられてきました。
脳の老化の研究は、これまではご本人が亡くなってからの解析に限られていましたが、科学の進化により、生きている人のデータによる検証が可能になり、衝撃の事実が明らかになりました。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ セントルイス・ワシントン大学のマヌ・S・ゴヤル助教授を筆頭著者とする、成人の脳代謝データを用い、男女の脳の年齢差を検証した研究結果が発表されました。
研究には、20歳〜82歳の健康な成人205名(女性121名、男性84名)が参加しました。
研究者たちはPET(陽電子放射断層撮影)で参加者の脳をスキャンし、酸素とブドウ糖の代謝、つまり、脳が活動に必要なエネルギーを供給する速度を測定しました。
そうして得られたデータを人工知能(AI)に学習させて、解析しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、全世代で、女性の脳の代謝年齢は男性よりもおよそ3歳若いことがわかりました。
2、男性の年齢と脳代謝の関連を調べたデータに、女性の脳代謝データを入力して脳年齢を算出すると、女性の脳年齢は実年齢より平均して3.8歳低くなりました。
3、逆演算で、女性の年齢と脳代謝の関連を調べたデータに、男性の脳代謝データを入力して脳年齢を算出すると、男性の脳年齢は実年齢より平均して2.4歳高くなりました。
4、これらの結果は、脳代謝の面から見て、女性の脳が同年齢の男性より若いことを説明しています。
5、この男女差は、20歳代から始まっていますが、「男性は女性より脳の老化が速く進む」という意味ではありません。
6、男性の脳は、女性の脳より3年ほど早く成熟期に入ることを示しており、これは生涯を通じて変わりません。
7、それが何を意味するのかを、私たちはまだ知りません。現在、それを確認するための研究を進めています。
出典:Proceedings of the National Academy of Sciences
https://www.pnas.org/content/116/8/3251
男性にはちょっとショッキングな研究結果ですね。
女性に生まれて得した気分になりますが、男性の方が女性より3年早く成熟し、あとはそれが続くだけなので、老化のスピードは一緒です。
つまり、脳の老化を考えるときには、男性の脳と女性の脳は別々に考える必要がありそうなのです。
また今回の結果で、脳の老化の軌跡が、個人によっては性差以上に大きな幅があることもわかりました。
3歳差は平均であって、実際には生活習慣やストレスによる個人差が大きいとのことです。
なので、男性だからションボリだとか、女性だからトクをしたとか思わずに、自分の健康は自分で管理していかなくは。
そして、AIに個人のデータを解析してもらえば、脳年齢が何歳で、実年齢より上か下かもわかるのですから、将来的には病気の早期発見につながりそうな期待も持てます。
いずれ、会社の定期健康診断でも脳代謝検査が当たり前になったりすれば、自分の生き方について考える機会も増えるかもしれませんね。
一般に、幸福感が高い人が長生きをする傾向にあることはよく知られています。
これからの時代、ジェンダーも多様化しつつあるので、性別がどっちかよりも、幸せかどうかが健康長寿のための重要な鍵になる気がします。
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