進化心理学では次のような、人々が好ましいと感じる性的魅力の進化論的な意義について考察します。
○人々が恋愛や結婚の相手にどのような特徴を求めるか?
○それらの特徴が男性と女性で、どう違うのか?
○短期的パートナーを求める人と長期的パートナーを求める人で、どのように異なるか?
研究は大学で行われるため、多くは大学生を対象にしていますが、彼らは、結婚相手を探すことが重要なライフステージにいる点で、一般の人々とは異なる可能性があります。
確かに自然淘汰による進化の観点から考えると、生物にとって生殖は重要です。
でも人類が皆、お騒がせ芸能人のように、何歳になっても恋愛体質というわけではありません。
ときめく恋より、子どもを育て家庭を営むことの方がずっと生きがいになるって、親なら誰でも知っているけれど、子どもを持ったことのない大学生にはおそらく分からないでしょう。
もし、幅広い世代や異なる文化圏でも進化心理学の研究をすれば、結果がくつがえったりして…?
そう考えたのは、私だけではなかったようです。
研究のサマリーをシェアします。
2019年、アメリカ アリゾナ州立大学のコ・アラ氏を筆頭著者とする、人間の社会的モチベーションを異なる世代、民族、文化で比較調査・分析した研究結果が発表されました。
研究者達は、以下の社会的モチベーションに対応する11種類の目標リストを作成し、現在の生活における優先順位をランク付けした各国のデータを入手しました。
A:危険から身を守る
B:健康を維持する
C:コミュニティに所属する
D:友人と一緒に過ごす
E:仲間に受け入れられる
F:良い社会的地位を得る
G:新たなパートナーを探す
H:パートナーとの別れを心配する
I:パートナーとの関係を維持する
J:親兄弟や親戚と一緒に過ごす
K:子供の世話をする
27カ国(オーストラリア、オーストリア、ボリヴィア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、チリ、中国、コロンビア、チェコ共和国、ドイツ、香港、インド、イタリア、日本、ニュージーランド、パキスタン、ルーマニア、ロシア、韓国、スペイン、タイ、トルコ、ウガンダ、ウクライナ、イギリス、アメリカ)の7,296人(平均年齢24.03歳)を対象としたデータが分析されました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、世界中の人々は一貫して、次の3つを優先順位の上位に位置づけました。
I:パートナーとの関係を維持する
J:親兄弟や親戚と一緒に過ごす
K:子供の世話をする
2、反対に、27カ国全てにおいて、以下の2つを人生のモチベーションを最も下げる要因として位置づけました。
G:新たなパートナーを探す
H:パートナーとの別れを心配する
3、新たなパートナー探しを重視する人よりも、家族との長期的な関係を重視する人のほうが、人生に満足していることがわかりました。
4、人々は一貫して、親族の世話とパートナーとの関係維持を人生における最も重要なモチベーションとして評価しており、このことは参加した27カ国すべてで何度も確認されました。
5、この結果は、韓国や中国のような集団主義的な文化を持つ地域でも、ヨーロッパやアメリカのような個人主義的な文化を持つ地域でも再現されました。
6、魅力を研究するのは簡単でセクシーなことですが、人々の日常的な関心は、実はもっと健全な、家族の価値に向けられていました。
7、人は、多くの恋愛相手がいれば幸せになれると思うかもしれませんが、本当は、すでにいる人たちを大切にすることが一番の幸せなのだと言えます。
出典:Perspectives on Psychological Science
腑に落ちる研究結果です。
他の動物と違って、人間の子どもは自立するまで数十年という長い時間を要します。
なのに、交配相手を増やすことに労力を傾けすぎると、子孫を養育する労力が不足してしまうでしょう。
子孫繁栄のためには、恋をする必要もあるけど、出産後の数十年間、ちゃんと子どもを育てられなくては元も子もありません。
ゆえに、恋愛よりも家庭を大切に考えるよう人類が進化してきたと考えるのは、自然な気がします。
おそらく先祖達は、親族で助け合うことで生き延びやすくなるし、身近な親族と共同で養育した方が子孫を残せると考えていたのでしょう。
つまり、家庭は人のエネルギーの充電池であり、家族の支えがあってこそ、人は幸せになれるということ。
裏を返せば、家庭内暴力や幼児虐待がいかに罪深く、深刻な問題かと言うことにもなりますね。
毒親やモラ夫たちには、即刻悔い改めて頂きたいですし、一人の親として、私自身も肝に銘じたいです。
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