世界的に見て、「孤独」は現代病のひとつと言われるようになってきています。
孤独に悩まされると聞くと、配偶者に先立たれた高齢者など老後問題との印象があります。
ところが2018年、イギリスBBCが複数の大学と共同で調査したところ、16歳〜24歳の40%が孤独だと回答しました。
一方、75歳以上の高齢者では、孤独だとの回答は27%に留まりました。
なんと、孤独に最も悩んでいたのは、高齢者ではなく、若い世代だったのです!
では一体、どういう若者が孤独に陥りやすいのでしょう?
若い世代が孤独になる原因を、幼少期から追跡調査した研究があります。
サマリーをシェアします。
2018年、イギリス キングス・カレッジ・ロンドンのティモシー・マシューズ博士を筆頭著者とする、幼少期の経験と若者の孤独との関連性を調べた研究結果が発表されました。
この研究には、1994年〜1995年の間にイギリスで生まれた2,232名の子ども達が参加しました。
参加者が5歳、7歳、10歳、12歳の時に家庭訪問を行い、参加者とその母親(または主な養育者)との面談を行いました。
18歳のときの家庭訪問では、参加者のみと面談し、孤独感、心と体の健康状態、ライフスタイルについてインタビューを行いました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、若年層の孤独は、性別や、社会的地位や、経済力に関係なく発生していました。
2、孤独に悩む若者は、そうでない若者と比較して、うつ病や不安症などの問題を抱えるリスクが2倍になりました。
3、幼少期に神経症、うつ病、不安症など精神的な問題を経験していると、18歳の時点で孤独に悩む可能性が高くなっていました。
4、幼少期にいじめや仲間外れなど人間関係のトラブルを経験していると、18歳の時点で孤独に悩む可能性が高くなっていました。
5、幼少期の母親のうつ病や、身体的虐待などの家庭環境の逆境と、18歳の時点での孤独感の強さとは、特に関連がみられませんでした。
6、若年層の孤独を減らすための戦略は、精神面での問題を経験している子どもや、いじめや仲間外れを経験している子どもに特に注意を払うべきであることが示唆されました。
出典:Psychological Medicine
これはイギリスでの研究なので、日本にそのまま当てはまるわけではありませんが、孤独になる可能性が特に高い子どもたちのグループを特定し、予防的な介入を行うという、興味深い内容です。
子どもが神経症や不安症などの辛い体験をした時、あるいはいじめや仲間外れなどの孤立を経験している時、親は必死に介入し、解決しようとするもの。
ですが、問題解決後も子どもの様子に気を配り、必要に応じて早めにカウンセリングや心理療法につなぐことで、将来の孤独を予防できるとのこと。
これは、親が頑張るというよりも、国の政策として検討すべき課題となりそうです。
実際のところ「孤独」は寿命を縮めるだけでなく、多大な経済的損失をもたらすとして、各国が真剣に対策を探りはじめています。
たとえばイギリスでは、2018年、世界初の「孤独担当大臣」のポストが新設されました。
日本でも2021年、イギリスに次いで世界で2番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」のポストが新設されました。
子どものいじめや不登校に対して、今まで親達が必死で奮闘してきましたが、これからは政府の本格的な支援が進んで行くのかと思うと、良い時代の流れだなと感じます。
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