虐待やネグレクトなど、幼少期の深刻なトラウマが、子どもの心にダメージを与えることが知られています。
ところが、それらよりもはるかに小さく日常的と考えられている、両親の言い争いも、子どもに悪影響を及ぼすのだそうです。
両親の言い争いを日常的に経験している子どもたちは、感情の処理に問題を抱えてしまうとの研究があります。
サマリーをシェアします。
2018年、アメリカ、ヴァーモント大学のアリス・シャマーホーン博士らを中心とした、両親の対立が子どもに与える影響の調査結果が発表されました。
研究では、9歳から11歳の子ども99名(男子56名、女子43名)の全員に、夫婦役の俳優が演じた、幸せそうな夫婦、怒っている夫婦、中立的な夫婦の写真を見せました。
また、子どもに自分の両親の仲の良さについて質問し、その母親には子どもの気質について質問しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、両親の対立が多い家庭の子ども達は、中立的な関係性の写真の正答率が低くなっていました。
2、このような子ども達は、中立的な表情を、怒っている表情と判断しやすい傾向にありました。
3、そのため、たとえ中立的な関係であってもトラブルの兆候を見てしまい、過剰な警戒感や不安感を抱いてしまいやすいのです。
4、内気な気質の子どもは特に脅威に敏感で、傷つきやすい傾向にありました。
5、親同士のぶつかり合いを完全になくすことはできませんが、子供たちが、「たとえ喧嘩をしていても、両親はお互いを思いやっており、問題は解決できる」というメッセージを受け取れるようにすることが重要です。
出典:Journal of Social and Personal Relationships
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0265407518762606
両親の言い争いのような一見日常的に思えるストレスも、子どもに良くない影響を与えていたとは考えさせられます。
普段から言い争いの多い家庭に育つと、中立的な関係を正しく読み取るスキルが育ちにくいということ。
確かに、緊張感ある家庭の子どもにとっては重要ではないスキルかもしれません。
なぜなら、両親が中立的な表情をしているように見えても、実際にはキレる寸前かもしれませんので、常に警戒する必要があるからです。
しかしそれでは、対人関係において、相手の曖昧な表情を正しく読めなくなってしまう可能性があります。
このままでは将来的に、教師、仲間、同僚、恋愛相手などとの人間関係で問題を抱えてしまう恐れがあります。
特に内気な子どもほど、ダメージを受けやすいとのことですので要注意!
両親それぞれの価値観がありますので、意見の相違があるのは当然です。
でも、そんな親達の日常的な姿を見て、子ども達が心にダメージを受けているならば工夫の余地があるでしょう。
たとえ子どもであっても、親同士が言い争う場面をなるべく見せないよう配慮すべきですね。
子どもの立ち場で考えれば、今、両親の仲がいいのか?、それとも喧嘩中なのか?を四六時中気にする暮らしは気が詰まることでしょうから。
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