ロシアのウクライナ侵攻のニュースが連日報道され、先行きが不安な毎日です。
大人でも暗い話題ばかりで気持ちが沈みがちですから、状況がまだ良く理解できない小さな子供達の不安や恐怖は計り知れません。
原型をとどめないほど粉々に破壊された建物、逃げ惑い号泣する人々、別離の悲しみや敵への憎しみの表情を露わにする人達‥‥。
こんな映像ばかりが繰り返し報道される毎日が、子どもたちの心の健康にとって良いはずがありません。
暴力的なニュース画像がメンタルヘルスに悪影響を与えることを突き止めた研究があります。
サマリーをシェアします。
2015年、イギリス、ブラッドフォード大学社会科学部のパム・ラムスデン博士は、暴力的なニュース画像を見ることで、実際にはトラウマ体験がなかったとしても、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に似た症状を経験する可能性があるとの研究結果を発表しました。
研究には平均年齢37歳の男女189人が参加しました。
参加者は、性格特性とトラウマ経験を調べるテストを受けました。
次にSNSやインターネット上のさまざまな暴力的ニュース画像を視聴しました。
この中には、9.11同時多発テロのツインタワー攻撃、学校の銃撃、自爆テロの映像が含まれていました。
その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の質問票に回答しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、暴力的なニュース画像を視聴しただけにもかかわらず、参加者の22%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の臨床測定で高いスコアを出しました。
2、彼らは以前にトラウマの経験がなく、トラウマ的なイベントに遭遇したこともありません。
3、画像をより頻繁に見たと報告した人ほど悪影響を受けやすく、その後のトラウマも大きくなりました。
4、タブレットやスマートフォンを介したSNSやインターネットへのアクセスは昨今ますます増え続けており心配です。
5、特にSNSでは、過激で暴力的な画像が編集無しの状態で一般の人の目に触れるようになっており問題です。
6、これらの画像を見て、困難に直面している人々の苦痛に共感することはメンタルにダメージを与える可能性があります。
7、ストレスや不安などの長期的な影響を経験するかもしれませんし、場合によっては心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験するかもしれません。
8、人々が暴力的な画像を表示するリスクを認識し、必要とする人々が適切なサポートを利用できるようにする必要があります。
出典:the Annual Conference of the British Psychology Society(2015)
やはり心配した通りの研究結果です。
今のタイミングでは、子ども達にはなるべくニュース番組を見せたくありませんね。
すでに暴力的なニュース画像を何度も見てしまい、不安が募ってしまったお子さんへの対策として、「惨事ストレスケア」のノウハウが役立ちそうです。
「惨事ストレスケア」とは、災害、天災、テロ、事故などの惨事に見舞われた際のストレスや悲嘆をケアするための支援のこと。
社内でそんな事件は起こらないに限りますが、人事としては万一の備えも整えておかなくてはなりませんので、私も惨事ストレスケアの研修を受けたことがあるのです。
その内容をまとめると以下の通りです。
1、ショッキングなものを見て気分が落ち込むのは正常な反応で、何ら問題ありません。
2、そんな時、一番良いのは休むこと。質の良い食事、睡眠、休養を取りましょう。
3、反対に、最もケアすべきは自責感。何の効果もなく、脳内エネルギーの浪費です。
4、なるべく一人にならず、感情を一人で抱えこまないようにしましょう。
5、ストレスの感じ方、回復の仕方は個々に違うので、他人と比べる必要はありません。
暴力的なニュースを見て不安になるのは、恥ずかしいことでも弱いことでもなく、人として普通のことだと、こんな風に専門家に教えてもらうだけでも少し安心します。
子どもにも伝えておきたいです。
親として暴力的なニュースを見せないよう気を配っていても、テレビやSNSでは次々にニュース画像が流れてきてしまいますよね。
そんな今は無理をせず、美味しいものを楽しく味わって、たわいもないおしゃべりに花を咲かせ、早めにお布団に入ってぐっすり寝ることを優先すべき時期なのかもしれません。
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