日常生活の中で不安を感じるのは誰にでもある正常なことですが、それを過度に感じてしまい自分で不安をコントロールできなくなると、社会生活に支障が生じてしまいます。
このような状態は「不安障害」(Anxiety Disorder)と診断されます。
不安を感じる対象や症状の出方はさまざまで、全般性不安障害やパニック障害などのさまざまなタイプが含まれます。
不安障害の原因について詳細は分かっておらず、世界中で研究が進められています。
新しい研究で、どのようなタイプの子供が大人になってから不安障害になりやすく、逆にどのような子どもの行動が不安障害の発症リスクと無関係なのかが明らかになりました。
サマリーをシェアします。
2021年 ニュージーランド オタゴ大学のネイサン・J・モンクを筆頭著者とする、小児期の不安・引きこもりと成人後の不安障害との関係を調べた研究結果が発表されました。
この研究では、1977年にニュージーランドのクライストチャーチで生まれた1,265人以上の子どもたちを40年以上にわたって追跡調査したデータが用いられました。
小児期である7歳~9歳の時に、様々な不安行動に関するテストとインタビュー調査を行いました。
思春期である14歳~20歳の時と、成人期である21歳~40歳の時に面談し、不安障害の程度を測定しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、男性の場合、14歳~20歳の時には27%、21歳~40歳の時には31%が不安障害と診断されました。
2、女性の場合、14歳~20歳の時には49%、21歳~40歳の時には48%が不安障害と診断されました。
3、将来不安障害になる人の子ども時代の行動には、「1人行動が好き」、「すぐ泣く」、「しょっちゅう悲しげな表情をしている」などの特徴があり、これらの行動はすべて、社会的にも感情的にも引っ込み思案である可能性を示しています。
4、対照的に、「内気」、「従順」、「権力者を恐れる」、などの傾向は、成人後の不安障害の発症とは関係ありませんでした。
5、この研究だけで断定はできませんが、人間関係での孤立や悲しみに関連した幼少期の不安行動が、その後の人生で不安障害を発症するリスクをもたらすようです。
6、一方、大人になってからの環境による恐怖や不安に関連する行動は、不安障害の発生リスクとはなりませんでした。
7、今回の調査では、子どもの生後1,000日の間に、社交性や感情統制能力を積極的に身につけさせることが有益である可能性が示唆されました。
8、親や養育者は子供が不安から逃げずに我慢できるようサポートすべきですが、もしそれが困難そうだと感じる場合は、育児講座や専門家のサポートを受けるべきです。
出典:Psychological Medicine
研究対象となった子ども達は、現在40代半ばの年齢になっているそうですが、男性の約3分の1と女性の約半数が不安障害とは衝撃です。
子どもの性格が引っ込み思案だったり、内気だったりして悩んでいるのを見るのは親にとっても辛いこと。
そんな時、親は将来子どもが困らないよう、小さいうちから一人にさせて自立心を養おうとしたり、集団行動をさせたりしがちです。
不安を経験することでメンタルが強化され、上手く行く子どもがいる一方、余計に傷ついて恐怖心が強まり、精神的な成長を妨げてしまう子どももいるのかもしれないことを、研究は示しています。
子どもをよく観察し、もし自分の不安をコントロールできず苦しんでいるようだと感じられる場合は、親は一人で抱え込まず専門家のサポートを受けるべきとのこと。
子どもが独特な個性や才能を持っている場合、親にはそれが理解できず、育て方も分からない可能性すらあります。
子どもが自身の特性にマッチした専門家や第三者の支援を受けられるよう、必要な環境を整えることも親の役目の一つと言えるでしょう。
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