「認知行動療法」(Cognitive behavioral therapy)とは、ものの見方や受け取り方など、認知に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一つです。
うつ病、パニック障害、強迫性障害、不眠症、薬物依存症、摂食障害、統合失調症などにおいて、科学的根拠に基づいた有効性が報告されています。
認知行動療法はオンラインのセッションでも効果があることがわかっていますが、対面することには患者とセラピスト間のつながりというメリットがあり、これがオンラインとは異なる治療効果を生む部分もあるというのがこれまで共通の認識でした。
しかし新しい研究で、セッションをオンラインで受けた人は対面で受けた人よりも効果を感じていることが明らかになりました。
サマリーをシェアします。
2020年、カナダ マックマスター大学のキャンディス・ルオ氏を筆頭著者とする、うつ病性障害における、対面型とオンライン型とによる認知行動療法の効果を比較した研究結果が発表されました。
研究者たちは15年間にわたって6つの異なる国で実施された17件の認知行動療法について、オンラインセッションと対面セッションそれぞれの効果を体系的に分析しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、参加者の満足度については、対面でもオンラインでも有意な差は見られませんでした。
2、ところが予想に反して、認知行動療法をオンラインで受けた人は、対面で受けた人よりも症状の軽減が大きくなりました。
3、人々が自身の快適な空間で、必要な時にメンタルヘルスのケアに容易にアクセスすることは理にかなっています。
4、17件の研究は異質性が高いため、すべての結果について決定的な結論を得るまでには至りませんでした。
5、しかし私たちの研究結果は、オンラインセッションが対面型セッションと少なくとも同等の効果があることを示しています。
6、患者とセラピストが望むなら、オンラインセッションによる認知行動療法を提供すべきであると言えます。
出典:EClinicalMedicine
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(20)30186-3/fulltext#
オンラインでのセッションには、予約を取ってカウンセラーに会いに行くのと同じくらいか、それ以上の効果があるかもしれないそう。
心理学部の学生として、カウンセリングを勉強中の私にとって驚きの研究結果です。
もともとこの研究自体、コロナ禍の前に開始されたものでしたが、オンラインによるセッションが、対面と同等かそれ以上に効果があることがわかり、このストレスの多い時期に患者が受けているケアの質に妥協がないことを、タイムリーに確認することができたそう。
正直患者の立場に立てば、やはりカウンセラー本人と直接合って、相性を確かめたいもの。
ところが、コロナ禍でやむなくオンラインに切り替えざるを得なくなってしまったことで、逆に良い効果を得られた人も居たようです。
オンラインでも相性の良いカウンセラーと信頼関係を築いていければ、問題を解決するのに支障はなさそうですね。
コロナ禍で会社の会議も学校の授業もオンライン化が進んでいますが、心理療法のセッションも続々とオンラインセッションに移行しています。
オンラインセッションのメリットとしては、患者は自宅に居ながら受けられるためリラックスしやすく、カウンセラーは画面を通して患者の生活環境がわかることから課題の背景を把握しやすくなることが考えられます。
加えて移動のためのお金も時間も節約できますから、忙しいワーキングマザーでも検討しやすくなったと言えます。
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