「全般性不安障害」(Generalized Anxiety Disorder)とは不安障害の一つで、過剰な心配や不安が慢性的に続き精神や身体にさまざまな症状が現れる障害です。
不安は目に見えないため周囲に理解されにくく、そんな自分の性格が好きになれずに悩んでしまう人も多いと言われます。
ですが、全般性不安障害の人が治療のために心理療法を受けたところ、性格が劇的に変化したとの研究があります。
サマリーをシェアします。
2021年、ノルウェー科学技術大学のレイフ・エドワード・オッテセン・ケネア教授を筆頭著者とする、全般性不安障害に対する心理療法が、ビッグファイブのパーソナリティ特性を変化させることを明らかにした研究結果が発表されました。
ビッグファイブとは、人の性格は5つの因子によって構成されているという学説のことで、「開放性」(Openness)、「誠実性」(Conscientiousness)、「外向性」(Extraversion)、「協調性」(Agreeauleness)、「神経症的傾向」(Neuroticism)の5つの因子の強弱で人の性格を分析します。
研究者達は、全般性不安障害の患者55名を認知行動療法グループ(28名)と、メタ認知療法グループ(32名)に無作為に振り分けて、それぞれ12回の治療セッションを行いました。
認知行動療法とは、物事の受け取り方に働きかけて心のストレスを軽減する療法です。
これに対してメタ認知療法とは、特定の思考を繰り返してしまう傾向への気づきを促す療法です。
治療セッションの前と後に、全員にビッグファイブの理論を用いた心理テストを受けてもらいました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、治療セッション前の患者達は、「神経症的傾向」が高く、「外向性」と「開放性」が低いという性格特性を示していました。
2、治療セッション終了後の患者達は、「神経症的傾向」が有意に減少し、「外向性」と「開放性」がわずかに増加していました。
3、「協調性」と「誠実性」には有意な変化は見られませんでした。
4、メタ認知療法の方が認知療法と比較して、より多く「神経症的傾向」を軽減させましたが、それ以外には差がありませんでした。
5、セッション終了後、患者達はより外交的になり、より社会的に働きかけるようになり、より興味関心を持ち、より暖かく友好的になりました。
6、つまり、人付き合いをしたいと思うようになり、新しい経験や新しい活動を求めるようになったのです。
7、これまで神経質だった人が、わずか12回の心理療法で性格が変わり、感情がより安定しました。
8、どちらの方法も神経症の特徴を軽減するのに同じようにうまく機能するようですが、とりわけメタ認知療法は大きな人格変化をもたらすと考えられます。
出典:Clinical Psychology & Psychotherapy
https://doi.org/10.1002/cpp.2541
効果的な治療を受けることで自分の嫌いな性格を変えられる可能性があるようです。
私の身近にも「これは自分の性格だから仕方ない、どうにも変えられない」と嘆いている人がいます。
でもそれは思い込みで、自分で自分自身への偏見や固定観念を持っているだけなのかもしれません。
治療方法が効果的であればある程、性格の変化も大きくなるとのことですので、希望が持てる研究ですね。
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