「脳の10パーセント神話」(Ten percent of the brain myth)とは、「ほとんどの人間は脳の10%かそれ以下の割合しか使っていない」という、科学的迷信のことです。
私が子どもの頃は、親だけでなく学校の先生さえも「人間の脳は10%以下しか使われていない」と力説していたものです。
その真意は「だから気合と根性で必死に努力すればもっと能力が上がるはずなのに、本気度が足りない」という叱責でした。
今から考えたら、それを言っている当人達も脳を100%は使えてはいない事になるのですけれども、当時の私は何となく責められている気がしたものです。
確かに血のにじむような努力や何かのはずみによって脳の使用制限が外れると、誰でも超天才になりえるというのは夢のある話ですし、映画にもなりました。
ですが残念ながら、私達が脳の10%しか使っていないというのは間違いで、MRIスキャンなどにより、脳には不活性領域がないことが証明されています。
脳はある特定の領域のみが活動しているのではなく、機能毎にメインとなる領域を変えながら、脳全体を使っていて、眠っている間も活動を続けているのです。
体の細胞は使われないとすぐに萎縮して死んでしまいますが脳も同じで、使っていない神経細胞はすぐに萎縮して死んでしまいますので、私達は10%よりずっと多くの脳を常時使っていなければなりません。
それにもかかわらず、この都市伝説がなぜこんなにも長く信じられてきたのかを調べたジャーナリストがいます。
サマリーをシェアします。
2003年、アメリカの健康・科学ジャーナリストであるクリストファー・ワンジェク氏が様々な科学的な俗説の起源を調べた著書を出版しました。
それによれば、「我々は脳の10%しか使っていない」という考えの最も古いルーツは、1870年代の生理学者の研究にあるそう。
1、彼らは脳に電流を流し、どの筋肉が動くかを調べるという研究を日常的に行っていました。
2、その結果、人間の脳の大部分は電流を流しても筋肉を動かさないことがわかり、彼らは脳のこの部分を「サイレントエリア」と呼びました。
3、それは不活性という意味ではなく、筋肉が動かないという意味でした。
4、それにも関わらず「サイレントエリア」との呼び名が誤解を生じやすかったため、脳は10%しか使われていないと言われるようになりました。
出典:Bad Medicine: Misconceptions and Misuses Revealed, from Distance Healing to Vitamin O
「脳は10%しか使われていない」という説は覆されましたが、実際に脳が何%くらい使用されているのか、それとも100%使われているのかは、まだ明らかになっていないそう。
今後の研究が楽しみですね。
そしていまだに、「脳の10パーセント神話」を持ち出して根性論で子どもを追い詰めるような大人に出くわしたら、科学的に論破して子どものメンタルを守らなくては。
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