不安は、私たちがより安全に生きていくために必要なものですが、不安感があまりに強すぎて日常生活に支障をきたしてしまうような場合は「不安障害」(Anxiety disorder)と診断されることがあります。
「社会不安障害」(Social anxiety disorder)とは不安障害の一種で思春期に多く発症し、職場や学校などで多くの人から注目される状況に強い不安と緊張を感じ、毎日の生活や仕事に支障をきたしてしまいます。
これに対して「全般性不安障害」(Generalized anxiety disorder)という不安障害は若い女性を中心に発症し、特定の状況に限定されず理由のはっきりしない不安や心配に襲われて、物事に集中できなくなってしまいます。
研究により、物事を悪い方へばかり考えてしまう不安障害は、知能の高さの表れであることがわかりました。
サマリーをシェアします。
2012年、アメリカ ニューヨーク州立大学ダウンステート・メディカル・センターのジェレミー・D・コプラン博士を筆頭著者とする、知能指数と不安障害の関係を調べた研究結果が発表されました。
研究には、全般性不安障害の患者26名(男性12名、女性14名)と健康なボランティア18名(男性8名、女性10名)が参加しました。
彼らにIQ判定テストと心配の度合いを評価するアンケートに回答してもらいました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、健康なボランティアでは、心配事が少ないほど、知能指数が高くなりました。
2、しかし全般性不安障害の患者では、心配の度合いが大きいほど、知能指数が高い傾向がありました。
3、全般性不安障害の患者は、健康なボランティアと比較して知能指数が高く、脳内の白質の活動レベルが高い傾向がありました。
4、白質とは、脳の灰白質の内側にあって神経細胞の連絡通路となっており、白質の活発な活動は、知能と心配性の両方に共通する機能的な神経の進化を表しているのかもしれません。
5、つまり、人類の進化的成功に貢献した脳の一領域である白質が、不安障害にも関与している可能性があります。
6、これまで不安障害は社会的不適応とみなされてきましたが、不安障害が高い知能と相関関係にあることは、不安が人類の進化に有利に働いていたことを示唆しています。
出典:Frontiers in Evolutionary Neuroscience
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnevo.2011.00008/full
なんと、人間の知能の発達とともに不安も進化してきたそうです。
おそらく人類の祖先達は、心配性な人がリーダーとなり、不確定要素としての危険を察した行動で生き延びて、子孫を残して来られたのでしょう。
確かに私の周囲にいる人たちを見渡しても、賢い人ほど将来の不安に対して早めに対策し、万一に備えている印象があります。
聞いた話ですが、カリスマと呼ばれるような名経営者にも心配性な人が多く、順調な時でも慢心せずに、微かな不安材料の兆しを見逃さず危機管理を徹底するのだそう。
日本では不安障害がまださほど理解されていないため、自分の性格上の問題だと思って自責したり、周囲に気づかれないよう隠そうとしたりしている人も多いそう。
そんな不安を抱える人を励まそうとして「落ち着いて」とか、「気にしなければいい」などの言葉をかけてしまうと、さらに傷つけてしまう可能性がありますので気をつけたいですね。
今この瞬間にも、「自分は不安障害ではないだろうか」とか、「とにかく不安でたまらない」などの悩みを抱えている人がいたら、こんな研究があることを知り、自分の個性を誇らしく思ってくれますように。
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