心理学で「真実性錯覚効果」(Illusory truth effect)と呼ばれる効果があります。
私達は同じ情報を繰り返し聞くことで、その情報が本当に正しいか間違っているかに関わらず、それが正しいという確信が徐々に強まってゆくのだそう。
政治家の選挙活動やテレビCMで、同じ言葉が何度も連呼されるのは、こんなところに理由があったのですね。
ですからそんな時ほど議論を注意深く吟味し、広告に批判的になるくらいでちょうどいいのかもしれません。
真実性錯覚効果は、実際に真実であるかどうかに関係なく、情報が反復提示されることで、その情報の処理が容易になることが原因で生じる脳の錯覚によるものだそう。
ということは、言われるままに信じて相手に判断を委ねてしまうのは、ちょっと怖いことでもありますね。
そんな真実性錯覚効果について調べた研究のサマリーをシェアします。
2010年、カナダ ウォータールー大学のジェイソン・D・オズブコ博士を筆頭著者とする、思い出された記憶が、新しい情報よりも真実性錯覚効果が高まることを調べた研究結果が発表されました。
実験では、事実に基づく記述の真実性を調査しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、記憶を呼び起こした情報が、実際に真実であるかのような錯覚を引き起こしていました。
2、その効果は、新しい情報を4回繰り返して伝えた場合と同程度のものでした。
3、記憶を思い出すことには、事実を直接調査しなくても本当であると信じさせる強固な効果があることが示されました。
4、したがって、すぐに思い浮かぶ考えには注意を払う必要があります。
出典:Journal of Experimental Psychology Learning Memory and Cognition
https://psycnet.apa.org/record/2010-23163-001
同じ情報を繰り返す時だけでなく、頭の中の過去の記憶を思い出す際にも真実性錯覚効果が働いてるそうです。
その場合、最初に覚えた時と、思い出した時の2回その情報に接していることになりますが、同じ情報を2回繰り返された場合よりもずっと真実味が増すそうです。
私自身、子育てのことで悩んでいる最中、ふと思い出された昔の記憶がとても真実味があるように思えることがあります。
でも、よく調べてみると、思い違いだったことが判明してがっくりすることも‥。
自分の記憶力に自信があったとしても、そこに錯覚がないかどうか、いちど疑ってみたほうがいいかもしれません。
人間の脳にこんな特性があるのですから、普段から触れている情報に気を配りたいものです。
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