スーパーリッチな大富豪なのに、毎晩の皿洗いをルーティンにしている経営者がいるって、割と有名な話です。
どんなに仕事が忙しくても定時に退社して家族と夕食を囲み、食後は妻や子供達がリビングで寛ぐ様子を眺めながら、自分は一人キッチンに立ち家族全員分の食後の皿を洗うなんて、なんと素敵な夫でしょう。
心理学で、毎日の皿洗いにはマインドフルネス効果(=今、この瞬間に集中することで心が落ち着き、仕事や勉強などのパフォーマンスが高まる効果)が認められることを調べた研究があるのです。
サマリーをシェアします。
2015年、アメリカ ユタ大学のアダム・W・ハンリー博士を筆頭著者とする、皿洗いがマインドフルネスの演習として利用できるかどうかを調査した研究結果が発表されました。
研究には、51人の大学生が参加しました。
参加者を2つのグループに分けて、両方に皿洗いをしてもらいました。
その際、一方のグループには以下のような説明を行い、マインドフルネス皿洗いを指示しました。
①皿を洗う間は、皿洗い以外せず意識を集中する。
②キッチンに立つ足の感覚に意識を向ける
③洗剤の色、香り、手触りを感じる
④洗うときには大きな音を立てず、食器を宝石のように丁寧に扱う
⑤食器を洗いながら雑念が湧いてきたら、洗っている水の温度、食器の手触りに集中し直す
⑥キレイになった食器を眺める
もう一方のグループには特に指示を行わず、通常の皿洗いを指示しました。
6分間の皿洗いの後、参加者にマインドフルネス、感情、経験的想起のテストを行いました。
結果、次のような事がわかりました。
1、指示通り集中して皿洗いをした参加者はそうでない参加者と比較して、インスピレーションが25%高まり、ストレスレベルが27%低下しました。
2、これらの効果は、瞑想で得られると期待されているものと同じです。
3、その一方、単なる皿洗いとして特に意識せずに行った参加者は何の効果も得られませんでした。
4、この研究結果は、マインドフルネスの実践によるポジティブな感情は、日常の様々な活動を意識的に行う事で培われる可能性があることを示しています。
出典:Mindfulness
https://link.springer.com/article/10.1007/s12671-014-0360-9
皿洗いにマインドフルネス効果があったなんて、おトク感があります。
わざわざお金を払ってヨガのクラスに通ったり、瞑想のプログラムを受けたりする必要ありませんから。
それどころ、集中力や気づきを高め、アイディアがひらめいたり、悩みを手放したりする時間に変わるというのですから凄い効能です。
それには、ただ単に皿を洗えば良いというわけではなく、目の前の作業を通じて、自分が今ここに存在していることを感じ、自身の呼吸や感覚や思考に気づくのがポイントです。
それならば、ひたむきになれる作業なら皿洗いに限らず何でもOKということになりますね。
私自身は、マインドフルネス皿洗いにはさほど興味を惹かれません。
むしろ禅宗の雲水のような、掃除も洗濯も料理も、心を込めて行う全てが修行であり、身の回りを整える事で心も人生も整ってゆくという考え方にあこがれ、日々励んでいます。
結局はマインドフルネスと同じことなのかもしれませんが「皿洗いは汚れたからするものではなく、自分の心を磨くためにするもの」なんて言われたらキュンとなります。
確かに、どれ程仕事で成功し大金を稼いでも、周りの人に自分の存在を喜んでもらえなくては虚しくなってしまいますから、皿洗いが家族に感謝されるならば、やりがいがありそうです。
毎晩皿洗いを欠かさないというセレブたちがマインドフルネス効果を狙っているのかどうかは定かではありませんが、あの有名人がやっているからと安易に真似するのではなく、自分らしく過ごすための思考の土台を先に整えたいものです。
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