私は会社の人事部で働いていますが、最近人事担当者の間で、「リカバリー経験」という考え方が注目されつつあります。
これは就業による疲労やストレスを低下させて、元の活力や心理状態に回復させる経験のことで、効果的な「リカバリー経験」の条件としては、次の4つが挙げられています。
「心理的距離」‥仕事から物理的にも心理的にも離れる
「リラックス」‥精神的にも肉体的にも活動を抑え、くつろぐ
「熟達」‥休んでいる間に自己啓発をする
「コントロール」‥休んでいる間に何をどう行うか自分で決められる
これらによって疲労やストレスから回復すると、労働者の働きがいや労働生産性が高まると言われていますが、これってそのまんま、育児疲れを癒す方法とも言えますね。
これら全ての条件を一度に満たす方法の一つが、休暇を取って旅行に行くというもの。
旅行がメンタルヘルスに及ぼす良い効果について調べた研究があります。
サマリーをシェアします。
2020年、アメリカ ワシントン州立大学のチュンチュ・チェン助教授を筆頭著者とする、旅行や観光の経験が幸福感や健康に長期的な影響を与えるかを調べた研究結果が発表されました。
研究には、台湾人500人が参加しました。
2013年の時点で、過去1年間の間に、将来の旅行の計画にどれだけの時間を費やしたか、何回旅行に行ったか、生活全体にどれだけ満足しているか、人生にとって旅行がどれだけ大事か、など旅行に関連する17の質問に回答してもらいました。
また、人生の満足度についても回答してもらいました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、年に数回の定期的な旅行は、人生の総合的な満足度を高めていました。
2、観光関連の情報に関心を持ち、旅行の計画を友人と頻繁に話し合う人は、旅行について何も考えない人に比べて定期的に休暇を取得し、旅行に出かける傾向がありました。
3、頻繁に旅行をする人は、全く旅行しない人よりも自分の人生に対する満足度が高くなっていました。
4、自宅から120km以上離れた場所に定期的に旅行すると回答した人は、旅行をほとんどしないと回答した人に比べて、総合的な幸福度が約7%高くなりました。
5、旅の経験の蓄積は、人生の満足度に小さいながらも顕著な影響を与えていると言えます。
6、この結果は、日常生活から抜け出し未知のことを経験する重要性を示していて、一日中会議をしているようなストレスの多い出張は、厳密には旅行の条件を満たしていないと言えます。
7、旅行は単に場所を移動するだけではなく、そこに意味を持たせることで楽しみが生まれます。
8、この研究結果は、旅行や観光が、人々の生活の質の評価に影響を与える重要な生活領域になり得ることを示唆しています。
出典:Tourism Analysis
休暇を取って旅行に行くと、日頃の忙しさによるストレスが減少し、精神的な安らぎを得られることが研究で明らかになりました。
旅先では、まったく知らない食べ物、芸術、風景などに触れて感銘を受けたり感動したりしますが、これにも良い効果があるそう。
旅行によるリカバリー経験は、育児疲れにも効果的と言えそうですが、コロナ禍で旅行に行けなくても対処法があります。
リカバリー効果はリラックスした時間や新しい体験など、さまざまなメカニズムでもたらされるため、旅行の動画を見たり、散策を楽しんだり、友人と思い出の写真を見ながら過ごしたり、子供と一緒にパズルで遊んだり、そんな新鮮で楽しい経験でもOKなのです。
リカバリー経験から得られるメリットを最大限に享受するコツは、心をこめて行うこと。
仕事と家事と育児に追われる忙しい毎日の中で、もし自分だけのリラックスタイムが確保できたとしたら、そんな時間だけは携帯電話をオフにして、貴重なひとときに集中したいものです。
↓いいね を押していただけますと励みになります。