一般的に、人間の脳は加齢と共に衰えると思われていて、若い頃に比べて新しいことを覚えたり、判断したりすることが難しくなると言われています。
実際に私の職場でも、少し年上の先輩が「もう年だから…」と、年齢を理由に新しい企画を諦めているのを目の当たりにすると、なんだか未来の自分の姿を見ているようで悲しくなってしまいます。
ところが最近の研究で、高齢者の脳にも意外な利点があることがわかりました。
サマリーをシェアします。
2021年、アイルランド ダブリン大学トリニティ・カレッジのキャサリン・モーラン教授を筆頭著者とする、心の迷いと加齢の関係を調べた研究結果が発表されました。
研究には、健康な若年者34名と、健康な高齢者34名が参加しました。
参加者に、一連の認知機能テストを実施しました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、認知機能テストでは、高齢者に加齢に伴う衰えが見られました。
2、しかし若年者は、高齢者と比較して心の迷いの傾向が強いことが示唆されました。
3、高齢者は、モチベーションを高め、集中力が必要なときに迷いを中断するための効率的な戦略を採用できていました。
4、高齢者の脳は若者に比べて集中力が高く、落ち着きがあり、不安を感じにくいということがわかりました。
5、一般的に「高齢者はぼんやりしている」と認識されていますが、それは普遍的な真実ではありません。
6、加齢に伴って心の迷いが減少するというのは不可解な発見ですが、結果的に、認知機能の低下というマイナス面を軽減することができていると言えます。
出典:Psychology and Aging
https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpag0000526
つまり、「もう年だから…」は単なる思い込み。
「年齢を重ねているからこそ」若年者とは違ったアプローチで貢献できることがあるということになり、勇気付けられます。
それに年を取るにつれて迷わなくなるというのは、思い当たる節があります。
亀の甲より年の功と言われるように、人生経験が豊富なことって物事を判断するにおいては圧倒的に有利ですから。
そういえば孔子は晩年に振り返って「四十にして惑わず」と語ったと言われています。
「四十才になり迷うことがなくなった。」という見解は、脳の発達から考えると理にかなっていたのですね。
それにしては相変わらず迷ってばかりの人生なのが不思議ですが、まだまだ気持ちは若い証拠ということにします。
何より子育ては、毎日が忍耐力の筋トレみたいなもの。
子育てを頑張っていると、子どもを通して若い世代のことを理解できるようになり、自分の思い込みを覆されることばかりですから、新しい価値観を理解しやすく、柔軟性が鍛えられている気がします。
毎日時間に追われ、迷っている暇すらなく、次々に目の前のタスクを処理していく毎日が、密かに集中力のトレーニングになっていたのかと思うと、ちょっと報われる気がします。
人生100年時代と言われる時代です。
若い頃からの経験に裏打ちされた落ち着きと思慮分別を兼ね備え、皆に慕われるような人生の先輩を目指したいものですね。
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