自分の力で何かを達成して周囲から高く評価されても、自分を異常に過小評価してしまう心理傾向のことを「インポスター症候群」と言います。
インポスター(imposter)とは詐欺師を意味する英語で、「詐欺師症候群」と呼ばれることもあります。
インポスター症候群には、一般に男性より女性のほうが陥りやすく、聡明で有能な人や専門職の人に多い傾向があるとのこと。
インポスター症候群の人は、学業や仕事でよい成果を上げても、自分に自信をもつどころか、次のような不安に駆られてしまいます。
「たまたま運が良かっただけなのに、私は周囲を欺いている。」
「自分の成功は周囲が助けてくれたからに過ぎず、自分は評価に値しない。」
「いつか化けの皮が剥がれ、私が無能だと周囲に知られるのが怖い。」
こんなインポスター症候群への対処法に関する、心理学の研究があります。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ ネヴァダ大学のリチャード・G・ガードナー教授を筆頭著者とする、キャリア訓練中、本人がどのようにインポスター症候群に対処しているかを調べた研究結果が発表されました。
研究では、職業訓練中の20名の大学生に対してインタビューを行い、自身のインポスター症候群と向き合うために、彼らがどのような対策を取っているのかを調べました。
そして、そのインタビュー結果を元に、213名の専門家による研修グループにて、彼らがインポスター症候群に対処するために用いている様々な対処法の効果を明らかにしました。
結果、次のようなことがわかりました。
1、自分が偽者であると感じている若者たちは、ゲームで気を紛らわせる、鏡に向かって自分を励ますなど、様々な方法で問題に対処しようとしていました。
2、しかし、もっとも良い方法の一つは、悩みを聞いてもらう、アドバイスを受ける、一緒に気分転換するなど、他人からの支援を求めることでした。
3、とりわけ、仲間内に支援を求めるよりも、自分の仲間以外の相手に支援を求める方が有効でした。
4、自分の所属グループの外に支援を求めることで、自分に欠けている部分に注目するのではなく、より全体的な視点で自己理解できるようになりました。
5、自身のインポスター症候群の感情を生み出しているグループの外部の人の方が、本人が自分の全体像を把握し、参照枠を広げるのを助けると考えられます。
出典:Journal of Vocational Behavior
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0001879119301095?via%3Dihub
なんと、一緒に学ぶ仲間同志で励まし合うよりも、家族、旧友、自分とは違う世界の重要人物などに相談する方が効果的とは興味深いですね。
私が思い出すのは、新卒で航空会社に入社し、訓練生として客室乗務員訓練センターでCAを目指して猛勉強していた時のこと。
残念ながら私は成績がそんなに良くなかった為、インポスター症候群には当たりませんが、同期の中には「今思えば確かにインポスター症候群だったな。」と思い当たる人がいました。
彼女は教官達からも一目置かれるほど優秀なのに、いつも「どうしよう」と心配していました。
とても重要な緊急脱出の訓練中も、救命胴衣の隙間からハンカチを取り出して額の汗をぬぐっていた姿が思い出されます。
確かに私の励ましでは、彼女の不安を払拭することはできませんでしたが、家族との長電話で、過酷な訓練を乗り切っていたようです。
高い能力を持っていることが裏目に出て、自分の欠点ばかりが目についてしまうなんて困りもの。
実際、日本の企業では、昇進のチャンスがあるのに「自分には無理です」と尻込みしてしまう女性社員が少なくないといわれます。
自分の職場にとらわれず、子どもの学校のPTA、ご近所のボランティア活動、趣味のサークルなど、仕事外の人とのおつきあいが、自分の思い込みを無くし、視野を広げる助けになってくれるのかもしれません。
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