年配者達のよく言うセリフに「最近の若いものは…」というのがあります。
年配者達は自分の若い頃と比較して、最近の若者は本を読まず、年長者を敬わず、知識が無いと思いがちです。
でもこれは今に始まったことではなく、古代エジブトの遺跡から出土した、粘土板でできた書簡にも、若い人たちへ苦言を呈する象形文字が書かれているとか。
なので、もし年配者達の歴代の苦言が事実だとすると、何千年もの間、人類は退化し続けているという奇妙なことになってしまいます。
研究によれば、世代ごとに、客観的には衰退していないのに、後の世代が衰退しているように見えてしまう、心理的な思い込みがあるとのこと。
サマリーをシェアします。
2019年、アメリカ カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・プロツコ博士を筆頭著者とする、若者を否定する年配者が発生するメカニズムを調べた研究結果が発表されました。
研究には、3,548人の中年アメリカ人が参加し、知識テストとアンケートに回答しました。
結果、次のようなことが分かりました。
1、読書家の大人ほど、最近の子ども達は本を読まなくなったと考える傾向にありました。
2、年長者の権威を重んじている大人ほど、最近の子ども達は年長者を尊敬しなくなったと考える傾向にありました。
3、知的な大人ほど、最近の若者は知性が低下したと考える傾向にありました。
4、追跡調査によると、参加者が、自分は子どもの頃も今と同じように読書家で、年長者を敬い、知性豊かだったと思い込んでいることがわかりました。
5、彼らは子どもの頃、自分が今ほど読書家でなく、年長者への尊敬心を持ち合わせておらず、知性に乏しかった記憶を思い出せなくなっていました。
6、また、それぞれ自分が得意とする特性(読書を好む、年長者を敬う、知性が高い)以外については、現在の若者に特に欠けているとみなす傾向は認められませんでした。
7、つまり、年配者が若者を否定する本当の理由は、現代の若者のレベルが下がっているのではなく、年配者本人が、自分自身について、子ども時代とは変わったことを忘れているという、記憶の偏りにあると言えます。
出典:Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/10/eaav5916
つまり、事実と異なる記憶による偏見が、「最近の若いものは…」という小言の原因になっており、実は本人の思い込みだということ。
プロツコ博士はこの現象を、「最近の子供たち効果」と名付けました。
これは、人間の心の仕組みに組み込まれているため、各世代が何度も繰り返し経験しているのだそう。
研究者達は、子どもを不当に非難する認知メカニズムである「最近の子どもたち効果」の原因を探ることで、将来の世代に対する不当な憂いを軽減できるかもしれないと考えているそうです。
未来を担う子ども達への、思いやりある研究ですね。
素直な子ども達が、そんな年配者のお説教を真に受けて落ち込まないよう、親としてもフォローしなくては。
また、「最近の若いものは…」と思うかどうかが、心の老化のバロメーターかもしれません。
そういう言葉を口にしないよう、私自身も気を付けようっと。
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