人間関係を円滑にするために、笑いは有効です。
気の利いたジョークが言える人には、「頭の回転が速い人なんだろうな。」という印象を持ちます。
ただ子どもの場合、素直なだけに、無邪気な一言が辛辣過ぎて、大人達をびっくりさせてしまうことも…。
いわゆるブラックジョークと呼ばれる類は、現代社会の不条理さや無神経さをユーモラスに表現しますが、時と場所によっては物議を醸してしまいます。
「子どもがブラックジョークを好むのは、性格がひねくれているからではないか?」と、心配になってしまう親もいるかもしれません。
ところが、ブラックジョークが好きなのは、高い知性の証との研究結果があるのです。
サマリーをシェアします。
2017年、オーストリア、ウィーン医科大学の、ウルリケ・ウィリンガー教授を筆頭著者とする、ブラックジョークの嗜好、知能、情緒安定度、攻撃性の関連を調べた研究結果が発表されました。
研究では156人の成人(女性76名、男性80名、平均年齢33.4歳)を対象に、知能、情緒安定度、攻撃性を測定しました。
また、ドイツの風刺漫画家、ウリ・シュタイン氏の漫画を評価してもらいました。
分析により、次のことがわかりました。
1、ブラックジョークを好まない人達は、知能が普通で、情緒安定度が低く、攻撃性が高い傾向がありました。
2、ブラックジョークの嗜好性が中程度だった人達は、知能が普通で、情緒安定度が高く、攻撃性は中程度との傾向がありました。
3、ブラックジョークを好む人達は、知能が高く、情緒安定度が高く、攻撃性が低い傾向がありました。
4、年齢と性別には有意差が認められませんでした。
5、ブラックジョークを好む人ほど、言語的知能と教育水準が高い傾向がありました。
これまでの研究では、攻撃的なユーモアを好む人は攻撃的な性格で、嫌な内容や病的な内容を扱った漫画を好む人は、情緒不安定だと考えられていました。
ところが本研究では、他者に対する攻撃性の高い人や、情緒不安定な人達は、ブラックジョークを好まないことが明らかになりました。
不吉で暴力的で悲劇的な内容のブラックジョークが、高学歴の参加者に好まれているとは驚きです。
彼らは、不快な内容を遊び心のあるフィクションとして扱うことに長けているのです。
風刺の利いた、ちょっとひねったジョークほど、理解するためには脳に負荷がかかります。
そのため、攻撃的になっていたり、感情的になっていたりすると、ブラックジョークを理解する遊び心が失われてしまうのかもしれません。
出典:Cognitive Processing
https://link.springer.com/article/10.1007/s10339-016-0789-y
ウリ・シュタイン氏は、風刺的な一コマ漫画で絶大な人気を誇る、ドイツでは知らない人がいないほどの人気漫画家です。
研究では、高い知能を持っている人ほど、ブラックジョークの機微を理解し、楽しむことができるとのこと。
子どもが、ちょっと毒のあるコントやアニメが好きだったり、痛烈な皮肉を言ってきたりするのは、性格が歪んでいるからではなく、知性が高い可能性があるのです。
なのでそんな時、親は批判を真に受けて怒ったりせず、ユーモアで切り返して笑いに変えていければ良いですね。
誰かを貶めない、傷つけない、差別しないことを大前提とした上で、家庭の中を楽しい笑いで明るくしておきたいものです。
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