子どもの学校から配られるお知らせで、ゲームのしすぎへの注意喚起がなされることってよくあります。
これまでの心理学の研究でも、暴力的なゲームは、青少年をより攻撃的にすると結論づけられてきました。
ですが、一概には決め付けられないとの研究もあるのです。
気になる研究のサマリーをシェアします。
2018年、アメリカ、ダートマス大学のアンナ・T・プレスコット教授を筆頭著者とする、暴力的なビデオゲームと攻撃性に関する研究結果が発表されました。
研究では、暴力的なゲームをすることと、その後の攻撃性との関係を調べた、過去の研究を分析しました。
対象となった被験者は17,000人以上で、様々な国籍・民族(オーストリア、カナダ、ドイツ、日本、マレーシア、オランダ、シンガポール、米国)で構成されており、彼らの平均年齢は9歳から19歳でした。
結果、次のようなことがわかりました。
1、暴力的なゲームをすることで、現実世界での攻撃的行動、攻撃的認知、攻撃的感情が増加していました。
2、また、暴力被害者への共感や社会的な行動は減少していました。
3、しかし、上記のような暴力的なゲームの悪影響の度合いを調べると、白人が最も影響を受け、アジア人には若干の影響が見られ、ヒスパニック系にはあまり影響が見られませんでした。
4、文化の違いによって暴力的なゲームの影響が異なる理由については、はっきりとは分かっていませんが、東洋文化よりも西洋文化において、より強い影響を及ぼしていました。
5、東洋的な、暴力の被害者に対する社会的責任と共感を促進する文化は、暴力的なゲームから心理的に距離を置き、悪影響を減少させる可能性があります。
6、逆に西洋的な、無骨な個人主義や戦士のようなメンタリティを促進する文化は、個人を加害者の役割に同調させ、暴力による被害者への同情心を失わせる可能性があります。
出典:Proceedings of the National Academy of Sciences
https://www.pnas.org/content/115/40/9882
私が興味深く思うのは、暴力的なビデオゲームによる悪影響について、文化の違いが関係しているということ。
個人主義の強い文化よりも、共感度の高い文化がある地域では、悪影響があまり見られなかったというのは、どういうことでしょう?
子どもが暴力的なゲームをしていたとしても、その家族の仲が良く、気持ちが通じあっている場合、ゲームの悪影響がさほど及ばないということになります。
良いか悪いかは別として、実際に、2011年に米国の最高裁判所は、子供による非常に暴力的なビデオゲームの購入やレンタルを制限することを目的とした、カリフォルニア州の法律を破棄しました。
それまでの、暴力的なビデオゲームの悪影響についての意見を懐疑的であるとし、「無害な娯楽」に例えたのです。
結局のところ、ゲームの悪影響の度合いは、環境によるということ。
「ゲームは害があるから禁止」という一方的な押し付けよりも、親子で話し合あって気持ちを伝え合う方が効果的かもしれませんね。
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